妹ラブなお兄ちゃんに、日頃の感謝を込めてバレンタインチョコを作ってみた!Part2


「すまない悟、明日ちょっと買い物に付き合ってくれないか?」

傑からそう誘われて、明日はなんかあったか?と頭の中で予定を確認する。そういえば馨が1人でメイク動画撮るって言ってたし、俺もなんか1人用の動画撮るかなーって考えてた事を思い出した。傑の買い物に付き合う間動画回すのもアリか…。

「いいけど、どこ行くわけ?」
「渋谷かな。」
「ん、分かった。時間は?」
「昼頃にしようかと思ってるいるよ。詳細は追って連絡するよ。」
「オッケー。俺も撮影したいし、カメラ持って行くわ。買い物終わったら俺の撮影に付き合ってよ。」
「勿論いいよ。買い物中でもいいし、撮影のタイミングは悟に任せる。」
「ん。」

そうして連絡が来たのはその日の夜。渋谷に12時集合。俺は馨に、傑の買い物に付き添うことになったと伝えた。

「明日?うん、分かった。私もメイク動画撮るし、買い物も行くから。」
「1人で?」
「ちゃんと歌姫さんと行くよ。」
「ん、分かった。気を付けて行けよ。」
「はーい。悟もね。」

翌日、2月10日。俺は貴重品とカメラをバッグに入れて、渋谷まではタクシーで向かった。傑と合流してからカメラを取り出すと、早速撮影を開始。

「るんるんチャンネルをご覧の皆さん、お疲れサマンサー!皆のお兄ちゃん悟だよ!今日は僕と、もう1人で外にいまーす!誰だと思う?ジャーン!」
「どうも、悟の幼馴染の傑です。」
「というわけ、今日は僕と傑の2人で渋谷に来てまーす!傑の買い物の付き添いなんだけど、僕もついでに買い物しちゃうよ〜!んで、傑は何を買いに来たわけ?」
「新しい服でも買おうかなって思って。」
「服か、いいねぇ!僕も買っちゃおっかな。馨にも服買ってあげよ〜♡」
「いいね、馨ちゃんの分も買いに行こう。」
「選ぶのも買うのも僕だから。」
「分かってるよ。」

渋谷のスクランブル交差点を渡ろうとすれば、俺に気付いた人たちの視線がかなり刺さった。傑も何度も動画や配信に出たことがあるからか、傑を見てる奴等の視線も感じる。けどまあそれは無視して青になったスクランブル交差点を渡った。

「ねえあれ悟君だよね…、」
「ね、だよね?!実物めっちゃイケメンじゃない!?」
「隣ってあの、よく出てるよね、」
「傑君だっけ?!ヤバ、2人共スタイル良すぎて次元が違うんだけど…!!」

そんな声を聞きながら交差点を渡り切って、傑が行きたいというショップへ。2人で服を見て、気に入った服は全部買った。あと靴も買った。傑も気になった服を買って、次は馨に買う服や靴を探しに店を移ろうとしたところで、リスナーらしき女に声を掛けられた。

「あ、あの、るんるんチャンネルの悟君ですよね…?」
「あー、うん、そうなんだけど、今撮影中だからごめんねー。」
「わぁー!!本物ヤバい!!めっちゃファンです!チャンネル登録もしてます!SNSも全部見てます!!」
「そうなんだ、ありがと。」
「握手して貰ってもいいですか!?」
「ごめんねー、今大事な撮影中だから。握手はするからそれで勘弁してくれる?」
「写真とか、」
「話聞いてた?」
「悟。」
「これくらいハッキリ言わないと伝わんないから。」
「そうだね、でも猿にも分かるようにもう少し優しく伝えてあげないと。」
「ハハッ、猿にも分かるって、ウケる〜。ハイ、握手したから終わりね。行こうぜ傑。」
「ごめんね。悟は基本、馨ちゃんがいないとああだから。」
「え…あ…、」

荷物を手にその場をさっさと立ち去った。傑はやれやれみたいな顔で俺を見る。

「ファンの躾けも大変だね。」
「ほんとにね〜?馨のストーカー事件以降、ファンサービスは基本お断りって発表したんだけどさ、たまにいるんだよね。自分は特別にファンサしてもらえるって思ってるのが。」
「フフッ、人気者は大変だな。そうだ、折角馨ちゃんの為に服を買うんだったら、バレンタインデーに渡すのはどうだい?」
「バレンタインデー…?そういやバレンタインもうすぐじゃん…。またトラック呼ばねぇと…。」
「毎年大変だな。」
「オマエだって結構貰ってんだろ。」
「まあね。でも私も食べてないよ。なにが入ってるか分かったもんじゃない。」
「それは同感。馨の手作りチョコ以外はいらね。」
「私も同感。」
「はぁ?馨の手作りチョコ食べていいのは俺だけだから。」
「カメラ回ってるのに俺呼びでいいのかい?」
「編集でカットするからいい。」
「そう?それじゃあ悟は馨ちゃんに服をプレゼントする、でいいのかな?」
「…いや、折角だしなんか作るか。あーでも、どっか外じゃねぇと作ってんのバレるじゃん。傑んちのキッチン貸してよ。」
「別にいいけど。いつにする?明日?」
「だな、今日10日だろ?」
「そうだね。なにを作るんだい?」
「あー…、馨が好きそうなの。…あ、特大チョコパフェとか?チョコレートフォンデュとか。」
「チョコレートフォンデュは簡単すぎる気もするけど。」
「だから特大パフェも作んの。」
「そんなに食べれるかな、馨ちゃん。」
「俺も一緒に食べるし。」
「そんな事だろうと思ったよ。」

俺としたことがバレンタインの事すっかり忘れてたわ…。馨にチョコ作る動画でも撮るか…。

「傑んちのキッチンで撮影してもいい?」
「別にいいよ、そうなるだろうなとは思っていたからね。」
「サンキュー。じゃ、この店の前から動画使うわ。」
「ああ。」
「はーい、次は馨にプレゼント買いに来たよ〜!馨にはバレンタインデーのプレゼントとして服を買いまーす!あ、勿論チョコも作るよ♡」

馨の好きなブランドの店に入って、馨が好きそうな服を選んだ。って言っても、

「ここからここまでとりあえず全部で。」
「かしこまりました。」
「皆さん、悟はこれが普通です。」
「うん、馨は何着ても似合うし。あ、サイズはいつもと同じやつね。あといつも通り全部マンションまで送ってくれる?」
「かしこまりました。いつもありがとうございます。」
「新作出たらまた買いに来るねー。あ、支払いこれで。」

カードで支払いを済ませて店を出た俺と傑は、スクランブル交差点の目の前にあるスタダに向かった。傑はコーヒーを、俺は新作のフラペチーノを買って、たまたま空いていた席に座る。カメラはテーブルに置いて俺と傑だけが映るように、テーブルに身を乗り出しながらカメラを見た。

「傑、この後行きたい所は?」
「いや、私の用事はもう済んでるから、明日の材料でも買いに行くかい?」
「あー、そうだな、そうしようかな。ん、これ美味いわ。」
「いつもながらトッピングの量が凄いな…。」
「あげないよ?」
「いや、いらないよ。」

傑はスマホを弄りながらホットコーヒーをブラックで飲んでいる。俺もスマホでチョコレートフォンデュの作り方を検索しようとしたところで、馨からLIME電話が掛かってきた。

「ん、馨から電話。出るわ。」
「ああ、どうぞ。」
『あ、もしもしお兄ちゃん?』
「んー、どうした?」
『まだ帰って来ない?』
「…え、なに、俺に会いたくなった?」
『うん、早く帰って来て。』
「傑俺帰る。」
「はいはい。」

傑は俺を見て小さく笑うと、スマホをポケットに入れて立ち上がった。俺も一気にフラペチーノを飲み干して立ち上がると、荷物を掴んだ。傑がトレイを片付けて、俺はカメラを回したまま荷物を手に店を出た。傑もついて来た。馨は傑も家に連れて来いと言う。ていうか…、なんでお兄ちゃん呼びなわけ?

「馨、今なんか撮ってんの?」
『撮ってない。硝子ちゃんがいるだけ。』
「あー、わかった。すぐ帰るわ。渋谷だから……10分くらいで帰れるだろ。」
『はーい、気を付けてね。』
「ん、愛してる。」
『んふっ、はい、ありがとう…♡』

硝子がいるからお兄ちゃん呼びかよ、別に硝子ももう俺らの関係知ってるってのに。電話を終えてすぐにタクシーを捕まえてマンションに戻った。エレベーターで最上階に上がって鍵を開けると、俺の荷物は適当に部屋に置いてリビングへ。俺の後ろに傑が続く。リビングのドアを開けてすぐ、パァン!と破裂音が鳴った。

「うおっ!?なに!?」
「ハッピーバレンタイン!お兄ちゃん、いつもありがとう!」
「…は?え?なに、撮ってんの?!」
「撮ってる!」

リビングのテーブルにはなにやら盛り付けられたチョコがたくさん。ガトーショコラとマカロン…生チョコサンドまであるじゃん!

「……え、わ、すげぇ、え、馨が全部作ったわけ?!」
「全部作りました〜!」
「あ〜…もう、マジでそういうとこ…、」
「ぎゃあっ!ちょ、まっ、スト、ストップ!」
「俺の馨マジで最高!!!ん〜〜〜っま♡」
「んぅ〜〜〜!?!?!」

カメラは録画だしあとでカットできるから、硝子と傑の前なのも気にせずにめちゃくちゃ抱き締めてキスしてやった。俺の馨マジで可愛すぎじゃん…!

「え、これあれ?バレンタインって言った?」
「言った!妹ラブなお兄ちゃんに、日頃の感謝を込めてバレンタインチョコを作ってみたー!いえーい!」
「最高過ぎるでしょ!え、食べていい?!あ、待って、手洗って来るわ。」
「うん、皆で食べよう!傑君も手洗って来て。」
「ああ、ありがとう馨ちゃん。」
「は?待って、なんで皆!?俺宛てだろ!?」
「傑君にはお兄ちゃんを連れ出してってお願いしたから、お礼に。」
「は?マジで?おい傑、」
「フフッ、お詫びに私も提案したんだから、それで許してくれるかな?」
「提案?なんの?」
「オマエマジでそういうとこあるよな…。まあいいわ、とりあえず手洗って来る。」

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