仲良し兄妹が撮影中に緊急で動画を回してみた!


「るんるんチャンネルをご覧の皆さん、お疲れサマンサー!皆のお兄ちゃん悟だよ〜!」
「お疲れサマンサー!皆の妹馨です!そして〜、」
「なぁおん?」
「ごじょにゃんもいるよ〜!」

3月に入って2週目の休日、僕と馨は外でロケをしていた。今日はホワイトデー用の動画だ。というのも、ホワイトデー当日は平日で学校だし、そもそも編集を挟むから当日ロケは無理。そんなわけで学校が休みの今日、ホワイトデー用のデート動画を撮るために外に来ている。僕と馨とごじょにゃんと、あとカメラマンと足役に歌姫も同行してるから、完全な2人きりじゃないわけだけど。

「今日はなんと、ホワイトデーということでぇ〜!」
「うんうん!」
「馨とデートしま〜す!」
「いえーい!ごじょにゃんもいるよ〜!」
「んみゃん?」
「ね〜?」
「いやいや、なんで連れてきちゃうわけ?」
「だってお留守番なんてかわいそうじゃん!」

今僕と馨がいるのは代々木公園。公園内はドッグランもあるくらいだし、ペットの連れ込みは問題ないかと撮影許可もちゃんと取った。あ、勿論歌姫がね?ごじょにゃんにはハーネスリードを付けているし、首輪もつけている。普通の猫は犬にビビるみたいだけど、ごじょにゃんは寧ろ自分から喧嘩売りに行くから面白いんだよねぇ。

「まずはごじょにゃんのお散歩、ごじょ散歩から始めるよー!」
「ごじょにゃんの〜、GO GO 五条!」
「みゃおん!」

リードはいつも通り馨が持っている。僕は自撮り棒で僕と馨を映しながら歩いて、歌姫が僕と馨とごじょにゃんカメラを向けながら歩く。途中でリスナーらしき人達に声を掛けられることも多々あった。まあ、休日だから人も多いよねぇ。

「え、ヤバッ!るんるんチャンネル!?」
「あ、ありがとうございま〜す!」
「ハーイどうも〜、」

馨はリスナーに声を掛けられる度にちゃんと足を止めててえらいねぇ。僕は馨以外に興味がないから適当に返してるけど。写真を求められることもあったけど、そんな時は歌姫が間に入ってくれたり、撮影中だから〜って言えば大体引いてくれるんだけどさあ…たまにいるんだよねぇ…。

「え、いいじゃないっスか!自分めっちゃファンで!ジュンスタとかも全部フォローしてるんすよ!」
「あー、そうなんだ、ありがとー。」
「ありがとうございます、」

こういう厄介そうなリスナーの時は僕が前に出る様にしてる。というのも、結構時間が経ったとはいえ、ストーカー野郎の一件もあったし…ぐいぐい来るリスナーは馨が怖がるんだよねぇ…。現に今だって、馨は僕の後ろでごじょにゃんを抱っこして隠れてるし。

「あのさぁ、リスナーさんが声掛けてくれるのは僕らも勿論嬉しいんだけど、本当に僕らのファンなら馨が怖がってるって見て分かんない?」
「あ?は?なんで怖がるんスか?自分リスナーっすよ?ファンなんすよ?」
「いやいや、ファンなら分かるでしょ?厄介な野郎から馨が怖い目遭ったの知ってるよねぇ?もしかしてそれ知らないでファンって言ってる?」
「すみません、あまりしつこいようなら迷惑行為で警察に電話します。」

歌姫が僕とファンを名乗る男の間に割り込んだ。男は歌姫を睨んで「は?誰?」と言いながら歌姫を突き飛ばした。歌姫はふら付いただけだったけど、これには僕も馨も怒ったよね…。ていうか、普段滅多に怒らない馨がキレた。トサッと音がして視線を向ければ、馨は静かにごじょにゃんを地面に降ろして、僕にリードの持ち手を握らせた。

「あーあ、やっちゃったねぇ君…。」
「あ、馨ちゃん、自分めっちゃファンで!」
「迷惑だって分かりません?」
「…え?」
「いや、分かりますよね?見た感じ私達よりも年上ですよね?もしかして、空気を読むって言葉をご存じないですか?」
「ハーイ、ごじょにゃんこっちー。歌姫も離れてー、」

僕はごじょにゃんを抱えて歌姫と共に馨から数歩離れた。歌姫が「ちょっと、どういうことよ?!」と馨を助けに行こうとするもんだから、歌姫の腕を掴んでそれを引き留めた。今馨に近付いたらマジでヤバいから。僕は勿論、あの傑だって、キレてる馨には敵わない。馨はマジで怒らせたらダメなタイプ。

「いや、1枚でいいから写真撮ってって言ってるだけじゃん?」
「1枚だろうが2枚だろうが、撮影のスケジュールに関わるので困ります。このあとお店も予約してますし、撮影が押して遅刻するわけにもいかないんです。あ、それとも遅刻した分の迷惑料とか請求してもいい感じですか?それなら何枚でも写真撮りますよ?今日は予約1年待ちのレストランを予約してるんです。いくらすると思いますか?コース料理で1人10万円はするんですよ?お兄さんがお金払ってくれるなら全然写真撮りますよ。何枚撮りますか?」
「え、いや、別に、」
「ごじょにゃんのお散歩の後は、クライアントさんとのお仕事も入ってるんですよね。そもそも今の撮影時間そのものが、私と兄からすれば仕事中なので、遠慮してもらえると助かるんですけど…、」
「いやだから、こっちはただ写真撮りたいってだけじゃん!?なんでそんな話になってんだよ!」
「きゃっ!?」

男が馨の腕を掴もうとしたらしい。馨が驚いたように声を上げながら、男の顎をパコッと殴った。ふらりとよろめいた男が、その場にへなへなと座り込む。あーあ…やっちゃった…。馨も僕も、子供の頃から誘拐対策に色々と護身術を仕込まれてるんだけど、馨は特にヤバい。なにがヤバいって、普通の時はすっごい弱いんだけどさぁ、キレてる時はマジでキレッキレなのよ。あーもうほら、男の脳みそ揺れてるっぽいね…。まあ、大丈夫でしょ。

「あ、ごめんなさい…!蚊が止まってて…!今トドメさしますね…!」
「馨ー、トドメはさしちゃダメだよー。お兄さんさぁ、先にそっちが手を出した証拠はちゃんと撮ってるから、変な気起こしちゃダメだよ?警察来てもいいってなら、今すぐ呼んであげるけど。」
「へぁ…?へ…?ひぇ…、」
「ちょ、ちょっとこれ、本当に大丈夫なの?」
「うーん、どうだろう。ただの脳震盪っぽいけど、救急車呼んで傑にも連絡しておこーっと。」
「私が救急車呼ぶから、アンタは夏油に!」
「大丈夫ですか?」
「馨、トドメはダメってば。ごじょにゃん持ってて。」
「みゃおん?」
「ごじょにゃ〜ん♡大丈夫だった?怖かったねぇ?」
「…馨って怒るといつもこうなの?」
「まあ、大体こんな感じ。あ、もしもし傑ー?」

僕は傑に、歌姫は119番で念の為に救急車を呼んでくれた。救急車が来るまで男は歌姫に任せて、僕と馨は撮影続行。周りにいた公園の利用者も目撃者になるわけだけど、流石にまずかったかなぁ…。馨はごじょにゃんの散歩を続けながら、いつも通りの馨に戻っている様子。暫くしてお散歩動画を撮り終えた僕と馨が歌姫の元に戻ると、男は救急車で運ばれて行ったらしい。

「硝子の病院指名した?」
「勿論よ。」
「…ごめんなさい、私つい…、あの人が歌姫さんに手をあげたからカッとなっちゃって…、」
「まあ、ビックリしたけど私を思ってやったことだから、仕方ないわよ…!それより、ここからが問題よ…。一連の証拠動画はあるとはいえ、目撃者も多いわけだし…、」
「ま、なんとかなるって。第一、先に手を出してきたのはあっちだし、馨もただの正当防衛だよ。腕を掴まれそうになって避けたらたまたまアイツの顎に当たっちゃっただけでしょ?」
「う、うん、当たっちゃった…。」
「それにほら、馨はアイツに止まってた蚊を殺そうとしてたわけだし。」

ま、蚊なんて飛んでないけどね。そんなわけで、今回の騒動は特に誰からも問われることなく穏便に済んだ。なんせ、救急車で運ばれた先で突然警察に事情聴取されるわけだから、アイツもビックリでしょ。あ、勿論僕達は動画のコピーを証拠として提出するし、リスナー向けにきちんとSNSで注意喚起もしておいた。公園での撮影を終えた僕達は、るんるんチャンネルとじゅ〜るのコラボ企画のため、じゅ〜るを販売している企業…いにゃばのオフィスに向かった。

『るんるんチャンネル:お疲れサマンサー!今日は外で撮影してたんだけど、ちょっと緊急で動画回したから皆見てね!僕らは普段学生してるから休日の撮影スケジュールは分単位で刻んでて、こういう事は困るんだよねぇ。皆も撮影中だからごめん!って言われた時は潔く諦めてね 悟』
『西中の虎:@るんるんチャンネル えっ!?』
『恵:@るんるんチャンネル 動画見ました。ファンが増えると対応大変だと思います。本当に好きなら撮影の邪魔にならないように努めるべきです。馨さんに怪我がなくてよかったです。』
『野薔薇様:@るんるんチャンネル 馨さん!めちゃくちゃ怖かったですよね…!相手の男は私が呪っておいたんで!!(>_<)』
『モブ佳:@るんるんチャンネル 馨ちゃんになんてことを…!( ;∀;)そのリスナーさん、るんるんチャンネルのファンなら馨ちゃんが嫌がるようなことやめて!』
『直哉ちゃんねる:@るんるんチャンネル あ゛?俺の馨ちゃんになにさらしてんねん。その男俺がシバキ回したるわ!!』
『呪いの王:@るんるんチャンネル その男は身の程を弁えろ。痴れ者が。』
『脹相:@るんるんチャンネル 馨ーーーーーー!怪我がなくて良かったぞ!!男の方は俺が処理しておこう。』
『西中の虎:@るんるんチャンネル 動画見た!とりあえず馨ちゃんが無事でよかった!その男もちゃんと反省するといいな!』
『モブ子:@るんるんチャンネル えー!?悟君も馨ちゃんもごじょにゃんも、そしてスタッフさんにも怪我がなくて本当に良かったです…!そして馨ちゃん、怖い思いしてトラウマになったりしてないかな…(; ・`д・´)』
『モブ菜:@るんるんチャンネル 緊急動画見ました!皆さん怪我がなくて本当によかった…!あとその男の人、るんるんチャンネルのファンなの?ってくらい悟君にも馨ちゃんにも、スタッフさんにも失礼ですね!!』
『おにぎり:@るんるんチャンネル すじこ!?明太子…おかか!!(´・ω・`)』
『パンダ:@るんるんチャンネル おー、大変だったなぁ。これだから人間は気持ち悪いな。俺パンダでよかった。』
『ミゲル:@るんるんチャンネル 動画撮影モ大変ダナ。ファンノ男ハ警察ノオ世話ニナッタミタイデヨカッタ。迷惑ヲ考エナイ行動ハヨクナイ。』

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