仲良し兄妹とごじょにゃんがいにゃばとコラボしてみた!


公園を出て、移動中の車内で馨と緊急で回した動画は、すぐにJwitterに投稿した。僕達は普段学生をしてるから、外でのロケ時間は限られているし、外に出てる時は大体どこかの企業とコラボしていたり、企業からのお誘いで出掛けてることが殆どだ。僕も馨も先方には絶対に迷惑を掛けたくないし、どんな理由であれ遅刻はしたくない。時間に余裕がある時は、写真を撮ったり握手するくらいのファンサービスならできるけど、大事な撮影中だったり時間に余裕がなくて断る時もあるから、その時は申し訳ないけど諦めて欲しい…と言った内容の動画だ。今まではファンサービスに応えることもあったけど、最近は企業案件も増えてきたし、今日だって企業とのコラボ企画の撮影と、なかなか予約が取れないレストランの予約日でもあったから今日は声掛けを断ったことも動画内で話した。勿論、それに激高してスタッフ(歌姫)を突き飛ばした男性ファンがいたことも、その男性ファンが馨に掴み掛ろうとしたことも、その男性ファンを警察に通報したことも嘘偽りなくね。Jwitterの反応を見た感じ、その場を目撃したリスナー達のリプライも僕達を擁護する声ばかりで助かった。

「るんるんチャンネルをご覧の皆さん、お疲れサマンサー!皆のお兄ちゃん悟だよー!」
「お疲れサマンサー!皆の妹、馨です!そして今日は〜、ごじょにゃんもいます!」
「実は今日、僕と馨とごじょにゃんでいにゃば食品株式会社さんの東京本社に来てまーす!」
「わ〜い!」
「みゃおん!」

ごじょにゃんがよくじゅ〜るを食べていることを知って、じゅ〜るの販売元であるいにゃばさんから今回、僕達と一緒に是非コラボ商品を、とお声掛けをもらった。僕と馨は喜んでその話を受けたし、是非ごじょにゃんも一緒に連れてきてくださいって言われて、ごじょにゃんと3人での訪問だ。通された会議室ではごじょにゃんをリュックから出してOKと許可を貰って、ごじょにゃんと担当者さんと一緒に動画撮影を開始した。

「そして今回、僕達るんるんチャンネルとコラボ企画を担当する、猫田さんでーす!」
「どうも、お疲れサマンサー!いにゃば食品株式会社東京本社、商品開発部の猫田です。るんるんチャンネルは大ファンでずっと見ていたので、今回こうやってコラボの話を受けてくださり大変ありがたく思います。」
「こちらこそ、ありがとうございます。いにゃばさんといえば、じゅ〜るだけじゃなくて色々な缶詰やレトルト食品なんかも製造していて、知らない方はいないんじゃないかな…?」
「ね!いやぁ、そんな大手企業さんとコラボだなんて嬉しいね!猫田さん、今日はよろしくお願いしまーす!」
「はい、よろしくお願いいたします!」

猫田さん(男)は僕らのチャンネル開設当初からのファンらしい。そんでもって、僕と馨がごじょにゃんを飼い始めてから、どうにか僕達るんるんチャンネルとごじょにゃんとコラボして、新商品の開発とPRを頼めないかと上にめちゃくちゃ掛け合ったらしい。

「今回僕達るんるんチャンネルと、いにゃばさんで合同開発したじゅ〜るの新味と、るんるんチャンネルとのコラボグッズを開発中だよ〜!」
「じゅ〜るの味見は勿論、ごじょにゃんが担当します!」
「みゃ!」
「わ…はぁ〜…、本物のごじょにゃんさん…凄い大きいですねぇ…!」

ごじょにゃんは猫田さんにすぐに懐いたらしい。珍しい…。多分だけど、じゅ〜るのテーマソングが小さく会議室内に流れてるからかな。馨がじゅ〜るをあげる時にこの歌を歌ってるから、じゅ〜るを貰えると期待してるらしい。食いしん坊すぎるでしょ。

「それじゃあ早速、コラボ商品の打ち合わせをしていくよ〜!」

会議室のテーブルに猫田さんと向かい合って座ると、早速商品の企画書を受け取って目を通していく。会議中の撮影許可は出ているし、音声さえ流れなければ映像は全部使っていいらしい。編集する時は会議中の映像に合わせて、僕と馨が歌ったじゅ〜るのテーマソングでも流そうかな。新商品の味はきちんと獣医師からの指導と監修を受けて提案されているらしい。試作品をお皿に出してもらうと、テーブルにゴロンと寝転がっていたごじょにゃんがすくっと立ち上がり、早くよこせとばかりににゃーにゃー鳴きながら猫田さんの手にパンチをした。

「うわぁ凄い、重たい猫パンチ…!」
「あー、強いですようちのごじょにゃん。」
「ごめんなさい、大丈夫ですか?!」
「全然大丈夫です!寧ろ自分にはご褒美みたいなもので…!わぁ、お待たせしましたごじょにゃんさん、どうぞ…!」

ごじょにゃんの目の前にお皿が置かれると、ごじょにゃんはぺろりとそれを平らげた。いや、あっという間過ぎでしょ!猫田さんは本当に猫が好きみたいで、ごじょにゃんの食いっぷりに感動していた。まあ、じゅ〜る分のカロリーを今日のご飯から引いてるってのもあって、お腹が空いてたんだろうね。ごじょにゃんは食いっぷりが良すぎて、どの味もすぐに完食してしまった。

「ごじょにゃんさんの食い付きがよくて、どれもGOサインが出たと思っております…!ありがとうございます…!」

なんて目を輝かせている猫田さんに、僕と馨も苦笑い。次はるんるんチャンネルとのコラボグッズについて、猫田さんから説明を受けた。いにゃばで製造された対象商品のバーコード5枚で、ごじょにゃんの等身大抱き枕や、僕達るんるんチャンネルとごじょにゃんの写真入りクッション、僕達3人の写真とサイン入りアクリルスタンドなんかが応募できるらしい。まあ、悪くないと思うよ。

「バーコード5枚なら確かに応募しやすいかも…。これって、ペット用の食品も応募対象なんですよね?」
「そうですね。専用のハガキにバーコードを貼って応募って感じですね。応募者の中から抽選で100名様がアクリルスタンド、50名様がクッション、10名様にごじょにゃん抱き枕が「それさあ、受注生産にしちゃえばいいと思うんだけど、馨的にどう?」え?」
「うーん、確かに…当たらなかったら皆ガッカリしちゃうもんね…。」
「そうそう、それに転売とかイヤだしさ。猫田さん、これ受注生産にしましょうよ。」
「で、ですが、あの…、」
「あ、お金なら全然僕ら出すから。」
「へえっ!?いえ、そんな、」
「全然出します…!だってここに書いてある…この、じゅ〜る1年分とか缶詰やレトルト食品の詰め合わせがお礼品って…、貰ってばかりなのも申し訳ないですし…!」
「で、ですが、あの、上に確認してみないことには、」
「じゃあすぐ確認してみて。…あー、グッズの製造メーカーも親父の会社の関連企業だから、製造費用は僕達の名前出したら安くなると思うよ。」

猫田さんは上に確認の電話を入れて、僕と馨はまたテーブルに寝転がるごじょにゃんを撫でながら待った。なんかめちゃくちゃペコペコ頭下げてるなぁ…。

「…えっと…、電話を替わって欲しいと言われたのですが…、」
「僕出るよ。」
「あ、はい、お願いします。」

電話を替わった僕がいにゃばの社長さんと直接話をした。僕が電話する隣で、馨が親父に電話しているらしい。親父も馨に甘いからなんとかして製造費用を安くしてくれるか、親父が払うとか言いそうだなぁ…なんて思いながら、社長さんを説得した。

「ちょっと、お待ちくださいね。馨、どうだった?」
「お父さんが全部出すから気にせず好きにしなさいって言われたよ?」
「あ、もしもし社長さん?製造費用は全額こっち持ちで大丈夫だから、完全受注生産って宣伝打ってもらえる?」
『えっ!?』「えっ!?」
「じゃ、そういうわけでよろしく〜!ん、猫田さん。」
「あ、え、大丈夫なんですか?」
「大丈夫!」「大丈夫です。」
「…え、ちょ、あ…えぇ〜…、す、凄いですね…、」

そんなこんなで、五条財閥の後押しを得た今回のコラボ企画の会議が終了し、ごじょにゃんとの別れを惜しんで涙を流す猫田さんに見送られていにゃば食品株式会社の東京本社を出た。ごじょにゃんを家に連れ帰るべく車に乗り込むと、歌姫の運転でマンションへ帰宅。ごじょにゃんを部屋に開放して、僕と馨はドレスコードに着替えた。ごじょにゃんに夕飯をあげて留守番を任せて部屋を出ると、再び歌姫の運転で予約1年待ちの高級レストランへ。このレストランも親父の知り合いがやってることもあって、撮影許可は貰ってる。そして僕が今日のホワイトデーに馨に向けてサプライズを準備していることも、席に座った僕達が映るように隠しカメラをセットしていることも、レストラン側と僕と歌姫だけが把握しているわけで…。

「いやぁ、腹減ったぁ…。」
「お腹空いたねぇ〜、お食事楽しみ…!」

僕と馨がドレスコードに着替えてる間に、車にも歌姫に頼んで隠しカメラをセットしてもらった。これで馨の反応は全部丸分かり。僕は馨のドレスを見てぴらっとスカートを捲ってみる。

「ちょっとぉ?!」
「え〜、ダメぇ?」
「ダメに決まってるじゃん!」
「…フッ、」
「…なに、なんか変…。なんか隠してる?」
「隠してないよ。なんで?」
「……、」
「なに?ぎゅーする?」
「…しる。」
「どっちそれ。」
「する。」
「ん、おいで。」

馨から甘えてくるなんて珍しい♡まあ、ここはカットかなぁ…いや、使いたい…迷うなぁ…。馨のドレスが皺にならないように肩を抱き寄せると、馨はセットした髪の毛が崩れないように僕に寄り掛かった。

「今日はもうご飯食べるところだけ撮ればおしまいだよね?」
「ああ、うん。そうだね。なぁに馨、疲れた?」
「ちょっと疲れたぁ〜。あ、歌姫さん、昼前のあの人大丈夫でしたか?なにか連絡来ました?」
「そういえば電話きたわよ。自分が悪かったって反省してるみたいだから厳重注意だけで解放したらしいわ。体調も問題ないみたい。」
「あ、そうなんですね…よかった…。」
「心配してんの?」
「うーん、だって…ファンの方だったし、私達も忙しかったから対応が雑になっちゃったのは申し訳なかったなぁって…。」
「まあ、それは仕方ないでしょ。写真だって1人撮ったら俺も私もってキリがないんだし。」
「着いたわよ。」
「ありがとうございます、」
「じゃ、戻るまで歌姫は自由行動で〜。」

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