16
ふと蒼の方を見ると、彼は何故か驚いたような表情をしていて。
「あおい…、?…どう、したの…?」と首を傾げて問えば
彼は俺の頬に手を伸ばして、軽く触れた。
「…………泣い、てる……」
「…え?」
その息を呑んだ気配に自分で頬に触ってみると、確かに湿っていた。
(……なんで……?)
今、行為が終わったばかりなのに。
今、自分は幸せなはずなのに。
……胸が締め付けられるように苦しい。
ぼろぼろと涙が溢れる。
快感でもなく、喜びでもなく、何か違う感情の涙が溢れてとまらない。
「なんで、泣いてるの…?」
戸惑いを含んだ問いかけに、ぶんぶんと首を振る。
涙が飛び散った。
「…ッ、わかんない…」
わからない。
わからないから苦しい。
何かが思考に靄をかけているように、どうして自分がこんな感情になるのか理解できない。
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