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「……っ、?…な、んで…おれ…」

「………」


そんな風にわけもわからずぼろぼろと泣く俺を見て、彼は何かを諦めたような表情で悲しそうに微笑んだ。


「あーあ、やっぱりダメだな」


俺の額にこつんと額を触れ合わせて、ふ、と彼は息を吐く。
こんな時でも、目の前で瞼を伏せるその顔を綺麗だと思う。


「んんっ、」


蒼が少しでも動くたびに、肚内に咥え込んでいる性器がごりごり擦れて変な声が漏れた。

そんな俺を見て、彼はすこし嬉しそうに笑って。


「…あーあ」


もう一度、彼は小さくそう呟いた。
そして、今度は寂しそうに笑う。
…その表情に、仕草に、首を傾げれば彼は俺の肩に顔を預けて、ぎゅっと優しく抱きしめる。
髪が顔に触れてくすぐったい。


「ごめん、まーくん。ごめん」

「あお、い…?」

「……ごめん」


何故か震える声で、いきなり、ひたすらごめんと耳元で呟き続ける蒼に、俺はどう反応すればいいかわからなくて。

……ただ、抱きしめ返すことしかできなかった。

その悪いことをした子どもみたいに泣きそうな声に、身体に、胸がぎゅううと苦しくなる。

(なんで、謝るんだろう…)


「……今日だけ、今日だけでいいから」

「……」

「今日で、最後にするから、繋がったままで寝たい…」


お願い、と蒼にしては珍しいほど弱々しく、顔を強く肩に埋めて小さくそう呟くから。
そんな口調で言われて、断れるはずなくて。


「…うん」


そう呟いて蒼の髪を撫でると、彼は安心したようにほっと息を吐いて身体から力を抜いた。
その様子に、自分も少しホッとする。

耳のすぐ近くで聞こえる、短く愛を囁く声。
いつもと違う、少し震えて…でも優しい声音。


「…うん。俺も、……好き」


そして俺たちは繋がったままの状態で、眠りに落ちることになった。

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好きって口にした瞬間に、わきあがった感情に。痛みに。

気づかなかったふりをした。
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