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***


蒼くんはそれから、紫苑といることが増えた。

少し寂しい…けど、仕方がない。

二人はうまくいっているようだった。
紫苑が話しかけて、蒼くんが時々それに笑いかえす。
とても、傍からみたらいい雰囲気のように見えた。


「あの二人って付き合ってんのかなー。どう思う真冬」なんて、にやりと笑いながら耳打ちしてくる依人に、蒼くんも現状報告してくれないし、色々聞くのもどうかと思って聞けずにいたおれは「どうなんだろう」と首を傾げた。

でも、確かに紫苑と蒼くんが付き合ってるんじゃないかっていう噂は広まっていて。
二人が放課後一緒にデートしてたとか、二人が抱き合ってるのを見ただとか、キスしてるのをみただとか。
色んなうわさが飛び交っている。
それならそれで、二人が幸せならいいのかもしれない。

紫苑も蒼くんに直接会いに来ることが増えて、その度に何故かますます色っぽくなって大人っぽい雰囲気になる彼女に、周りは驚いていたようだった。

おれも正直驚いた。

人って、恋をするとここまで変わるものなのか。


…………

………………………



それから二週間が過ぎた。
放課後ということもあって、皆もう帰ったんだろう。

人がほとんどいない、がらんとした校舎内。

蒼くんが何も言わずにどこかへ行ってしまったので、授業で分からなかったところを教えてもらおうと探しに行った時のことだった。

きょろきょろと周りを見回しつつ歩く。



すると、


「…――、?」


ふいに蒼くんの声が聞こえたような気がして、そっちに顔を向けるとそこは授業で使われない一つの空き教室だった。


(…こんな教室あったんだ)


へー、と感心しながら、丁度僅かに開いていたドアの隙間から中を覗きこんだ。



「……………」


(………え?)


おれは、夢を見ているのだろうか。

予想もしない光景が目に飛び込んでくる。
開いた口が塞がらない。
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