14
他に人がいないから、シーンとして静かだ。
けど、まだ王様ゲームは続いているらしく、隣の部屋から壁越しに声が漏れてくる。
蒼くんと二人なんだと思うと、こらえきれなかった。
「う、う…」
ぼろぼろと泣きだすおれに、蒼くんが慌てたような表情でよしよしと撫でてくれる。
優しい手に安堵して、また涙が溢れる。
やばい。とまんない。
ぐしぐしと手でぬぐいながら、ずっと不安に思っていたことを聞きたくて蒼くんを見上げた。
「…もう、怒ってない?」
「怒ってないと思う?」
そう問いかけてくる蒼くんの表情が、声が…胸に痛い。
やっぱり…怒ってる…。
「…う、うああ。お、おこっでるううう…」
うわああんと泣き出すと、「…嘘だよ。怒ってない」と抱きしめてよしよしと頭を撫でてくれる。
人に抱きしめられるって、なんかいいな。……安心するし、ずっとこうしていてくれないかなとさえ思いながら「ほんと?」と信じ切れずに半分疑ってしまう感じで、じっと見上げれば「うん」と彼は表情を和らげて微笑んだ。
その笑みが優しくて、ほっと胸をなでおろす。
「まーくんには、怒ってない」と小さく呟く蒼くんに、じゃあ誰に怒ってるんだろうと考えて、そんなの決まってる。おれが悪いんだ。全部おれのせいなんだから。
……でもそもそも蒼くんは、なんでそんなに怒ってたんだっけ。
抱きしめられたまま、なんか楽しくなってきたので「うはは」と笑いながらおれもその背中に腕を回してぎゅーとやり返す。
蒼くんの身体が何故か一瞬びくっとした。
反応が面白くてもっと強く抱きしめてみる。
やっぱりなんだかおれから抱きしめた方が蒼くんが不意をつかれたみたいに固まってて、普段あれだけクールというか、格好良いのに意外と可愛くてすごく面白い。
「…まーくん」
耳元で囁く、聞いていて心地いい声に目を閉じながら「んー」と頷くと。
蒼くんの身体からなんだかとてもいい匂いがする。
「俺が止めなかったら、本当にキスした?」
「…うー?うん。してた」
「……」
なんでこんなこと聞かれるんだろう。
蒼くんもやっぱりそういうのに興味あるんだなぁとなんとなくびっくりしながら、コンマ数秒で「してた」と頷く。
多分、してたと思う。
だって、ふわふわして、別にキスくらいどうでもいいやって思えてたから。
「…俺も人数増やして騒ぎにしたくないから、できるだけまーくんには無防備に誰かに近づかないでほしいな」
「にんずう?」
「うん。どうしても、俺は自分の好きな人に近づく人間が許せないから」
「…あおいくんの言ってること、むずかしい」
むうと顎に手を当てて、必死に雲の上にいるような感覚で考える。
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