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「ぁ…」
庭に出て、空を見上げると小さい粒が空から降ってきて肩や足に落ちる。
その光景を目に焼き付けるようにじっと見つめていると、肩に何かがかけられた。
大きなコートで、わざわざ取ってきてくれたのか、と驚いて蒼を見ると「風邪でも引かれたら困るから」とぶっきらぼうに言われ、なんだか昔に戻ったみたいだな、なんて考える。
あの時はこんなことになると思わなくて。
ただ、優しい人だなんて思ったあの頃の自分が少しだけ憎らしい。
どのくらいそうしていたのか、ただ静かに空を見上げる俺を見て、ふ、と蒼が目を細めた。
「まーくんは肌が白いから、雪が似合うな」
「…そう?」
褒められているのか、けなされているのか分からない言葉に首を傾げる。…と、
「真冬」
後ろから抱き寄せられて珍しく名前を呼ばれた。
何事かと蒼を見上げれば、ひんやりとした手に頬を触られて「冷たい」と眉を顰められる。
「そろそろ戻るよ」
「わ、」
膝裏の少し上あたりを支えられて、抱き上げられる。
別に体重が軽いわけでもないのに、易々と持ち上げられて。
さっきまで地面を踏みしめていた足は宙に浮いた。
遠ざかっていく景色を見たくなくて、スタスタと未練がなさそうに屋敷に戻ろうとする蒼の首筋に顔を押し付けた。
――――
再び籠の中に舞い戻る。
戻りたくない。
……そう言えたらいいのに。
その願いがかなうことはないけれど。
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