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ぴくん、と大げさなほど震えてしまう。
それに対し、笑みを零した気配が伝わってきて恥ずかしくなる。
……と、
気遣うように。
そっと、優しく重なるやわらかい唇の感触。
強張る身体と相反するように、壊れ物を扱うような口づけに心拍数が上がる。
(……これが、キス、なんだ)
なんて考えて、人生初めての体験に緊張してどきどきしていれば、感触を残したまま静かにゆっくりと離れていく。
もうそろそろいいかな、と閉じていた瞼を持ち上げようとして「まーくん、」と呼び掛ける声。
すると、
お互いの指が交互に絡み合うようにして手を繋がれた。
「まだ待って」
「お願い」と懇願するように言われてしまえば、逆らえずに目を閉じたままになる。
よくわからないけど、素直に頷く。
すぐ傍で布擦れの音。
指を絡めたまま布団の上に手の甲をつけるようにされて、自然と仰向けになって背中に感じる布団の感触に驚く。
「口、開けて」
「…あー、…?」
何故か強請るように囁かれ、…言われるまま思考を放棄して従う。
(蒼が言うことだからって、今何の疑問もなく開けたけど…すごいばかみたいじゃないか…?)
自分の姿を客観視して、恥ずかしくなってきた。
手と腰回りにかかる微かな重みと暗くなったように感じる閉じた瞼の向こう側。
流石に戸惑って目を開ければ、おれを押し倒すような体勢になっている蒼を見上げる。
(……ぇ、?)
……距離が、近づく。
薄く整った唇をほんの少し開き、その隙間から僅かに見える妖艶な赤い舌先。
瞼を軽く伏せた、端整な顔がすぐ目の前 に
「……っ、ん、ぅ…?」
その行動の意味を理解する時間はない。
再び、今度はさっきよりも強引に唇を塞がれた。
なんで、と思うより先に下唇を舐められ、びくっとする。
けど、繋がれて布団に押し付けられている手によって動くことを許されない。
にゅるりと何かが口の中に入ってくる。
(え…っ、ちょ…っ)
何、と一瞬硬直して、本気で焦った。
「…っ、んん、…っ、や、」
追い出すように口を閉じ、必死に繋がれてない方の手で肩を押し、顔を離す。
目を開ければ、考えられないくらい近く。
冷たく感じるほど美しい顔に色気を滲ませた蒼と、至近距離で目が合う。
ゾクっとするような、欲情した目。
けど、今度はその自由だった手も指を絡めるようにして布団に縫い付けられ、…すぐに重ねられる吐息。
拒絶する隙なんて与えない程、舌に飴玉を舐めるようにして口の中を嬲られた。
さっき侵入してきたそれが、キスしたことがなかったから舌だなんて気づかなくて、捕らえるように舌に触れてくる感触にパニックになる。
「っ、?!ぁっ、ん、…っ、んふ…っ、ふぁ…っ、」
「………っ、は、」
生き物みたいに柔らかく粘膜を擦られ、舌を吸われて。
今いる場所も時間も忘れるほど、有無を言わさず震えて脳髄を蕩けさせられる。
(これ、舌…なのか?!)
驚いている間にも、動きはとまらない。
「はぁ…――っ、ふあ…っやぁ、あっ……んん、んぅ、っふ……」
溢れんばかりの唾液が呼吸をしようと開いた口の端から頬を伝って零れていく。
ゾクゾクと背中を駆け上がる快感。
やめてと言おうとしても、手を繋がれた状態で布団を下にしてるから、全く身体を離すことができない。
(こんなキスだなんて思わなかった…!)
驚いて離れようとするよりも早く、そのままめちゃくちゃに官能的に舌を絡ませられる。
くちゅ、クチュ…と絡み合う舌から卑猥な音がして、それが自分の口からも漏れているんだと気づき、頬が熱を持つ。
「ぁふう…っ、ふ…っ、…っ」
「…ん、かわいい」
びりびりと電流みたいなものが身体を走り抜ける。
とろんと脳味噌がとろけちゃうような体感。
しばらくそれが続くと、酸欠で、自然と瞼の裏が熱くなって涙が零れる。
頭がマヒしたようにぼーっとしてきた。
苦しい。
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