蒼の欠席 1
***
………今日、蒼が学校を休んだ。
転入してきてからずっと一緒にいたから、いないということがなんか不思議な感じで、どうにも落ち着かなくて。
それだけ一緒にいた時間が長かったんだななんて思いながら、地図を見ながら首を傾げる。
「んー、こっちだったはずなんだけどなー」
そして、今、おれは蒼の家に向かっていた。
蒼は絶対に家の場所を教えてくれないから、人に聞いたものだけど。
葉がおちてそれが一つもない木々に少し寂しさを感じながら、周りを見回しながら歩く。
……そして蒼の家の住所を誰に聞いたかと言えば。
その時の状況を思い出してみる。
――――――――――――――
「……」
「あ、滝沢なんて言ってた?」
滝沢っていうのはクラスの先生の名前だ。
依人が後ろから抱き付いてきて、相変わらずスキンシップが激しい依人に苦笑しながら答える。
寒くてマフラーを首に巻きながら「体調が悪いんだって」と伝えると「ふーん」と興味なさげな声。
相変わらず、どろどろの人間関係の話以外はどうでもいいらしい。
依人らしくて、やっぱり依人は依人だなと思ったら笑みが零れた。
でも。
「…(…大丈夫、かな。)」
気になる。
今日出た宿題も渡したいし。
ふとお見舞いに行こうかなんて思って、「あ、でも家知らないんだった」と気づいて呟くと。
おれの零した言葉の意味を察したらしい。
「え?蒼の家なら俺知ってるけどー?」と何の気なしにさらりと依人がおれの肩に顎をのせて得意げに笑うから。知ってるのか、と驚くと同時にその情報の入手手段が気になって、…なんとなく予想はついてるけど聞いてみた。
蒼は誰にも家の場所を教えたがらないから、多分本人に聞いたわけじゃないと思う。いや、そう思いたい。
……というか、本人からだったら自分だけ教えてもらえなかったことがショック過ぎる。
教科書を鞄にしまって、チャックをしめながら疑問を投げかけてみた。
「…なんで知ってるの?」
「んー、遊び相手に聞いた」
「……そ、そっか」
声が上擦る。
遊び相手というのがどんな人か前に教えてもらったことあるだけに、無意識に表情が固まる。
こんな感じの依人が近くにいるから、多分蒼とのこともそこまで気にならないんだろうなと考えて、嬉しいのか悲しいのかわからなくなってため息をついた。
…本当は依人の遊び相手についてもっと聞きたいところだけど。
でも、深くおれが口をだすことでもないので「なんか困ったら言って」と呟き、自分にできることなんて少ししかないけどできるだけのことはしたいから、と言いながら依人のはずれかけたマフラーをその首にちゃんと巻きなおした。
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