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そんなに体調が悪いのかと問うと彼は力なく首を振る。
その動作さえ、ふらついていて、見ていて危なっかしい。
「違う」
「…蒼?」
体調が悪いわけではないと彼は言う。
別に平気だという。
……なのに、だったらなんでそんなに、
(蒼は、震えているんだろう…)
肩を掴む手から、震えが伝わってくる。
それは、何かを酷く怖がっているようで。
何かに怯えているようで。
ぎゅっと握りこんだ拳を握った。
「あお…」
「もう、ここには来るな」
声をかけようとすれば、その強い拒絶の言葉に、声に、表情に、思わず息を呑む。
自分は蒼にとって、とても害のある何かをしてしまった。
そんな気がして、罪悪感に苛まれる。
でも、何故ここに来ただけでそんなに拒絶されるのかわからなくて。
「あ、う、…ご、ご、めん」
その勢いに押されるように謝れば、彼は一瞬しまったという顔をして、表情を緩めて「来てくれてありがとう。でも、ごめん」と謝っておれの髪を撫でた。
指が食い込んでいた肩の痛みが、疼く。
「俺のことより、まーくんの方が心配だから。寄り道しないで帰るんだよ」
なんて、子供を扱うみたいに言って笑った蒼の顔が強張っていて。
無理して冗談を言っているようで、それを自分がさせていることに気づいて苦しくなった。
「…わかった。…ごめん。ちゃんと帰る、から。また明日」
「…―――――うん。また、明日」
そうしておれは別れを告げて、尾をひかれるようにして帰った。
………結局、果物も宿題も渡せなかった。
それからも蒼の尋常じゃない様子が気になって眠れなかった。
次の日、学校に来た蒼は「昨日はごめん」と謝ってくれて。
おれもいきなり押しかけてごめんと謝った。
………でも、なんであんなに「帰って」と言ったのか。
その理由を何度聞いても、彼は笑って誤魔化すばかりで。
(表面上は、いつも通り過ごしてるように見えるけど)
……でも、なんか
何かが
(いつもと、違う)
答えのない不安に、胸が騒めいた。
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自分は何か大事なものを見落としているような、そんな気がした。
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