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「…俊介のせい、じゃない…っ、ほんとに…俺、いつから、蒼に嫌われてたのか、…全然、気づいてなくて、…っ、なんでか、大嫌いだって、…っ、」
「…あー、…それなぁ、…」
慰めるように頭をぽんぽんと軽く叩き、撫でる手が止まる。
「一之瀬は絶対にお前のこと、嫌いじゃないから安心しろ」
「…っ、なんで、そんなこと、」
俊介に言えるんだと言おうとすれば、彼はにっと笑った。
「俺はエスパーだからな!」
そう笑う俊介につられて、少しだけ気が緩む。
いつも通りな俊介がいてくれるから、まるであれが夢だったように思える。
さっきまであんなに沈んでいた心が、明るくなる。
本当に俊介がいてくれてよかった。
「……俊介、眼鏡外した方がモテそう」
「はぁ?!」
今、俊介はお風呂上がりで眼鏡をつけてない。
勿論眼鏡をしてても格好いいんだけど、外したら本当に爽やかイケメンって感じになるんだなと今の笑顔を見てしみじみと思う。
前も思ったけど、性格も含めて女子に好かれている理由がわかる。
だから今思ったまま口からぽろりと零れたその言葉に俊介がまたぎょっとしたような表情をして、むっと顔をゆがめた。
なんとなく気に入らなくてたまらないという顔。
「………。一之瀬がお前のこと嫌いって言った意味、なんとなくわかってきた」
「………え、?」
「あー、すまん、悪かった。嫌いじゃない嫌いじゃない。すぐに泣きそうな顔すんなって」
わしゃわしゃと髪をかき混ぜられて、頭がぐるんぐるんと揺さぶられて「うわっ」と声を上げると、うははと屈託のない笑顔をされて、何故かその笑顔にどきどきして俯いた。
「あの、それで、俊介が俺のこと好きっていう話は、本当…?」
「…おう」
おずおずと俊介のほうを見ると、少し赤くなってふいと視線を逸らされる。
「それは、ともだち、ではない意味で?」
「………おう」
ぼそりと呟かれる言葉。
面と向かって、こういう意味で好きって言われたことがないだけに、どうしていいかわからない。
「その、俺達男どうしなのに?」
「…う、…おう」
一瞬その質問に怯んだらしい俊介は言葉を詰まらせて、頷く。
その様子を見て、考えた。
友達として好きって言われるなら、俺も好きだよって返せるけど。
友達としての好き以外には、なんて返せばいいんだろう。
「いつから?」
「…っ、なんか、恥ずかしい質問ばっかだな」
食い入るように見つめながらそう問えば、俊介が顔を染めたまま頭を抱える。
俊介って誰かと付き合ったことありそうな感じなのに、すごく反応が純粋だと思う。
…不意に、蒼のことを思い出して瞳を伏せる。
「その、…俊介は俺とそういうことがしたいの?」
蒼は、ずっと俺と”そういうこと”がしたかったと言っていた。
俺の泣いた姿が見たいって。
俺を――犯して、でもそれでも蒼を恨み切れない姿が見たい、ってそう言っていた。
「……」
今思い出しても、冷たい蒼の瞳は身体を震えさせる。
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