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…俊介は蒼が俺のことを嫌うことなんかないって言ってくれたけど、本当にそうなのかな。
普通、好きな相手にそんなこと思ったりするのかな。


「俊介は俺のこと、犯したいって思う?」

「な…っなに、言って」


そう問えば、俊介は一瞬トマトみたいに真っ赤になって絶句した。
でも、俺の真剣な表情を見て顔を強張らせる。


「…一之瀬が、そう言ったのか」

「……うん」


素直に首を縦に振ると、「あー」と呻いて。
彼は首に手を当てて、恥ずかしそうに俯いた。



「犯したいって気持ちもないことはない、けど」

「…っ、」

その言葉に、緊張していた身体が震える。
そんな俺を見て、焦ったように俊介が否定の声を上げた。


「いや、でも実際にはやんねーよ。当たり前だけど」

「…うん」


よかった。
とりあえずその言葉にほっとして頷いて、先を促せば俊介が困ったような笑いを浮かべる。
今また、蒼みたいになることはないと思ってるけど、もし同じようなことが起こったとして。
その相手が俊介だったらもう立ち直れなくなる。

…俊介がそう言うってことは、やっぱり蒼は俺のこと嫌いってことであってるんじゃないだろうか。

実際に嫌だって言ってもやめてくれなかったし、現実に無理矢理……挿れられた。
その時のことを思い出して俯く。
そんな俺に対して、俊介が小さく唸って顎に手を当てた。


「それに真冬は特になんか、そそられるしなぁ。その気がなくても襲いたくなるフェロモンが出まくってる気がする。真冬自身も誤解されるような行動するし。さっきの一緒に寝よ?とか」

「…なんで?」


なんでそれがだめなんだと首を傾げれば、彼ははぁとため息を吐く。



「…わかってないところが一番やばそうなんだよな…」と小さく呟いて、不意に真剣な顔をして俺の肩を掴んだ。

「…へ?」

その行動にびっくりして声を上げると、俊介の顔が段々近づいてくる。
な、なんだろう。


「…真冬、目閉じて」

「…?うん」


俊介のいつもと違う少し真剣な囁くような声音に、何か目についてるのかなと不思議に思いながら黙って従った。
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