7

視界が真っ暗になる。

「……」

「………」

閉じたのに、しばらく何もなくて、無言になってしまった空間に耐えきれなくて。
少し待って目を開けると、俊介が俺の肩を片手で掴んだまま

……顔をおさえて何故か俯いていた。

下から覗き込めば、何かとても悔しそうな表情を浮かべている。


「…俊介?なにかあった?」

「あーあーあー」

「俊介?何?どうしたの?」


いきなり声をあげ始めて、驚く。
心配になって声をかければ、彼は「なんで素直に俺のいうこと聞くんだよ!」と睨み付けながら怒られて。


「え、だ、だって」


オロオロしながら、俊介が目を閉じろっていうからって言おうとすれば言葉を遮られた。
すごい怒ってるような喜んでるような微妙な顔を浮かべた彼は、「ああもう!」と声をあげて悶絶していた。

…また、俺は何かだめなことをしてしまったのだろうか。

すると俊介が顔を上げて、言う。


「キスされたらどうすんだよお前は…!あんなことあって、よく目閉じれるよな…!??」


大声でそう叫んでうおおと呻く俊介に、慌てる。
「なんか信用され過ぎて罪悪感で死ぬ…!!」と嘆くその様子に、戸惑ってとりあえず謝ろうとすると、


「何も理解してないのに謝ろうとするな!ばかやろう!」と先読みされた挙句に暴言を吐かれた。


「…あ、っと、…キス、って…」


確か…えっと、唇を合わせるやつ、のことだよな。
頭の中でその意味を考えながら。呆然とその言葉を呟けば徐々に頬があつくなってくる。


「な、なんで、このタイミングで、」


全然全く、予想していなかった。
あわあわと唇を震わせてそう呟けば、「好きだからに決まってんだろ!」と真っ赤になってぶち切れられる。
そもそも、俊介が俺のことを好きってこと自体なんか現実味がなくて、だからこそそういうことをされそうだったなんて夢にも思わなかった。

「ったく、あぶねー本当、この天然、ばかやろう」と罵られて、う、と怯む。
言い過ぎじゃないかと思ったりもするけど、言い返せない。
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