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***

最近、ちゃんと夜は家からでなくなったおかげで、あの足音に怯えることはなくなった。

やっぱり、あの時間に出かけてたから駄目だったんだろうな。


「…っ、さむい」

「うん。寒いな」


蒼が苦笑しながら、ふ、とその口から白い息を零す。
ポケットから何かを取り出して、マフラーの下の俺の首に当てた。
「わ、カイロだ」と首筋に触れるその温かさに、ほっと息を漏らす。
寒い時にあったかいものに触れると、なんか安心する。


「うへー」なんてぬくぬくとする感情に頬をだらしなく緩ませていると、「まーくん」と名前を呼ばれる。
「なに?」心地よさに閉じていた目を開けると、蒼がカイロを首から離して「ちょっと、目瞑ってて」と微かに微笑んだ。


(…なんだろう?)


首を傾げながらも、素直に目を閉じる。
視界が真っ暗になった。

「絶対に、目は開けたらだめだよ」と何故か念を押されて、ごそごそと何かの音がする。

マフラーを解かれ、その後すぐに頭に何かが触れて、その正体が何かわからずに「な、何…!」と声を上げた。

なんでマフラーをとったんだとか首に吹き付ける風が冷たい寒いと色んな感情が一気にわき上がる。

反射的に身構えるも「あと、ちょっとだから寒いのは我慢して」と笑いを含んだ声が聞こえたので、とりあえず害のあるものではないんだろうと判断して身体から力を抜いた。

その吐息でなんとなく、すぐ近くに蒼がいるのを感じる。

真っ暗闇のなか待っていると、首に何か冷たいものが触れた。

硬くて、細い。

「…?」と疑問に思いながら、「目、開けていいよ」という蒼の声に促されてそっと瞼を持ち上げる。

なんとなく首の辺りに何か重みがあって、ソコに目を向けた。

視線が、下に向く。


「――え、これ」


すご、い。というか、なんでこんなものを俺に、と信じられないような気持ちで蒼を見上げる。

彼は、「前のおかえし」と照れたように笑った。

自分の首にかかったネックレスを見て、顔が自然と綻ぶ。
嬉しい。嬉しくて、今にも全速力で走り出せそうなくらい、気分が上昇していく。


「…うさぎ…」

「うん。まーくん、前に庭でうさぎって言ってたから、好きなのかなって思って」


蒼がくれたそのネックレスは、銀色のチェーンの先に深い青色のうさぎがいて、そのうさぎの後ろに重なるように月があった。


「うさぎと月の組み合わせは、幸運を運んできてくれるんだって」

「幸運…。…そうなんだ。すごい綺麗…」


この前見た蒼の庭の雰囲気と似ていて、とても可愛くて綺麗だった。

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