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昨日の板本君の話が、ずっと頭の中をぐるぐるしている。
…蒼は、一体その人達に何をしたんだろう。
「まーくん、…昨日は大丈夫だった?何か用事があったって留守電に残ってたけど」
そうだった。今は朝の登校中だった。
俯いて考えていると、ふいに心配そうな顔をした蒼が覗き込んでくる。
気まずくて、無意識に視線をそらしてしまう。
…蒼は、昨日の板本君とのことを知らないようだった。
よかったと心の中で安堵しながら、「うん。大丈夫だった。その、昨日は、」と考えていた言い訳を話そうとすると
彼は俺の頭を撫でながら、首を横に振って小さく笑みを零した。
「いいよ、言わなくても。俺はまーくんが無事ならそれでいいから」
「困ったことがあったらいつでも言って」と続けられるその優しい言葉に、胸の辺りがぎゅうって苦しくなる。
(…いつも思うけど、なんでこんなに蒼は優しいんだろう…)
そう思うと同時に、昨日の板本君の話を思い出して、罪悪感でいっぱいになって俯いた。
後ろめたさ。申し訳なさ。
そんな感情が湧き上がってくる。
…蒼についての話を本人でない人から聞いてしまった。
知りたかったのは本当だけど、…ああやって聞くのは普通に良いことじゃない。
俺だって調べられて、勝手にその話を他の人にされていたら嫌だと思う。
でも、知ってしまったからには、いや多分俺にとっては知らなければいけないことだったから。
(…それに”あのこと”についても――)
尚更、どうなったのかを聞きたくなったけど、でももし自分から尋ねて蒼に昨日何してたかっていうことについて聞かれたらぼろが出そうな気がする。
板本君から聞いたなんてことも蒼に言ったら、板本君が困ると思うし。
「それと…何度も言ってると思うけど」
不意に真剣な表情になって、俺をじっと見る蒼に少しどきどきと緊張する。
「うん?何?」
「板本には、絶対にこれ以上近づかないでほしい」
そのさっきとはうって変わった強い口調に、目を瞬く。
…別に、そんなに悪い感じはしないというか。むしろ普段はいい子なのに。
蒼が前からこんなに板本君を警戒している理由がわからない。
「…っ、なんで…?」
「友達になったってことも知ってる。だめだって言っても、それでもまーくんが一度”友達”になった人間はどんなことがあったって見捨てられない性格だってことも知ってる」
「…蒼?」
酷く辛そうな表情でぎゅっと拳を握ってそう吐き捨てるように呟くから、何も言い返せない。
その暗い瞳が、俺を捕らえる。
「それを知ったうえで…あいつに近づかないでほしい」
「なんで…そこまで」
蒼の考えていることが全くわからない。
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