不良と 1

***

それからはあれだけ怒鳴ってしまったくせに話すことなんてできなくて、ひたすら蒼から逃げてしまった。

俺が逃げるたびに浮かぶ蒼のその悲しそうな表情が胸に痛かった。

でも、何か教えてくれるまで、俺だって引き下がれない。

…その、夜のことだった。


『あのね、どうしても柊君にしてほしいことがあって、…近くにいるから今すぐ来てくれない、かな…?』


携帯からそんな、酷く慌てたような声が聞こえてきたのは。


――――――――――


「…っ、はぁ―――ッ、は…っ」


夜中の22時。
いつもなら家で寝ているはずの時間に、商店街の方に向かって全力疾走していた。

板本君に何があったのかはわからない。
でも、凄く何かに困っている様子だった。

今すぐ来てほしいってすごい困ってる様子だったからマフラーをするのも忘れて出てきてしまったせいで、首に吹き付ける風が肌に痛い。
息を吸うたびに冬の風が喉を通って肺に入って、咳き込む。

冷える。痛い。冷たい。

こんな時間に外出するなんてと、もしここに蒼がいたらすごく怒られるだろうな。


「…っ、(…でも、)」


明るい道から、少し外れた公園の方に走る。
…真っ暗でほとんど周りが見えない。

電話で指定されたそこにたどり着く、…と


「…いな、い…?」


どうして。確かに電話ではここだって言ってたのに。
公園内をひととおり探すも、誰かがいる気配はなくて。

焦る。早く。早く見つけないといけないのに。


「…っ、板本く、」

声を出そうとして、突然背後から口を塞がれた。
「ン゛ンッぐっ、」無我夢中で逃れようとして、けど強い力で圧迫されていてびくともしない。男の手らしいごつごつとした感触に無理やり口を押さえられ、茂みに引きずられた。


「ッ゛!!ふ、ぐ…っ、…っ!」


頭や肩をぶつけて苦痛の声が零れる。
誰かが俺の身体の上にいて、手首を地面に押し付けられた。

怖い、痛い、なんで俺、今
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