眠たい(真冬ver)



***


「……んぅ…」


結局彼方さんに起こしてもらった後も、またぐっすりと眠ってしまった。(とてつもなく意地悪な起こされ方をしたので若干不服だ)

時計を見ると12時過ぎ。

今日はやけに眠いな、なんて目をこすりながら怠い身体に鞭をうって、辛うじて顔だけを布団から出した。

彼方さんに何度も「部屋から出ないでね」「一人行動しないように」と念を押されていたが、そんな気も起こらないくらい眠くて眠くてたまらない。

あくびをして、もう一回寝ようかなと考えて瞼を閉じて、布団をまた被った。


(寝よう…)


心の中で決意したその時、カチャリとドアが開く音がした。


(…ん?)


どうしようもなく眠いけど、何度も起こしてもらったような気がするし、ちゃんと目が覚めているうちに「おつかれさま」と「ごめんなさい」って言おう。


「ぁー…」


うめき声のようなよくわからない音を口からを出して、布団から顔をだす。

暖房が効いているからか、あたたかい空気に安堵して身体を起こす。


「…おれ、さっきねちゃって、」


自分でも呂律がうまく回ってない気がするけど、この際致し方ない。

起こしてくれたのに、ごめんなさい。と言いかけて、その言葉を遮るように声が言った。



「贈り物は、気に入ってくれた?」

「…かなた、さん?」



おくりもの…?なんだっけそれ、と寝起きのせいでぼやける視界をはっきりさせようと。


よく目を凝らした瞬間。



「恥ずかしいから、見ないでくれると嬉しいな」

「…え、」



そんな照れ隠しのような言葉と寸分違わずに、その人間のような形をしたぼやけた影が何かを持ち上げたように見えて。

俺の頭部めがけて、その鈍器を振り下ろした。

――――――――――――

テーブルの上に置かれたカップ。

それは、深夜にどうしても眠れずに紅茶をいれて飲んだ跡。

紅茶のティーパックの中に大量の睡眠薬が入っていたという事実を。

彼らは知らない。
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