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「大丈夫。君の御主人様はちゃんと全部見ててくれるよ。見えてないだろうけど、そこの天井にカメラがあるんだ。そこで録画してるから、きちんとやり遂げないと捨てられちゃうよ」

「…っ…すてられるのは…いやです…」


血の気が引く。
いやだ。いやだ。それだけは、どうしてもいやだ。
ぱさぱさに乾いた唇を歯で噛んだら、血がにじみ出てきた。
精液以外ほとんど水分をとれてないはずのに、どうして血は水みたいに流れてくるんだろう


「心配しなくても、蒼くん以外はハジメテなんだから、優しくするって」

「…っ、ぅ、あ、あ…っ、」


見えない視界で手を繋がれて、口を塞がれた。
べちゃべちゃと音を立ててキスされ、肌を重ねられる。
性器を咥えられて激しくしゃぶられれば、呆気なくびくんと痙攣し、欲を放ってしまう。


「じゃ、今から俺たちが気持ちよくちゃんと繋がるために、真冬くんにはオナニーしてもらっちゃおっかな」

「…おな、にー…?」


グチュグチュっ、ネチュっ


「こうやって胸を弄りながら指で穴をかき混ぜるんだよ。それぐらいわかるでしょ?」

「…っ゛、!は、ぁ゛!ぅ、…う…っ」

「解れたと思ったら言ってごらん。”御主人様のおちんこをどうか俺のいやらしいおまんこの中に挿れて、気持ち良くしてください”って」

「っ、んぅ゛、っ、は、い…、わかり、ました…」


頬に触れた手に、その声に、コクンと頷く。

そんな誘い方、誰にもしたことない。


「これナカに塗り込んでね」

「…っ、はい……」


コロン、とボトルみたいなものが転がってくる。
出てきた液体を手のひらにたらし、


「ンン゛…っ!ぁ、ん…っ…」


淫らに股を広げて、ナカに指を入れて掻き回した。
ぐちゅぐちゅになるまで、適当に指で襞を擦り上げ、声をあげる。


「……は、ん…っ、ン゛っ」


発情した動物みたいに、いつも御主人様にされるときみたいに、命令されるときみたいに本能のまま指で湿っている粘膜をグチュグチュ擦り、混ぜる。



「…そんな顔でこんな姿俺に見せちゃってさ、真冬くんってマジでやらしーね」


グチュグチュ!


「…っ、はぅ、!?…ん…っ、」


声と同時。

予期せず、また唇を塞がれてキスをされながら無造作に指を差し込まれた。

乱雑に肚のナカで数本の指を動かされ、だらしなく唇が開いて熱く濡れた声を出した。

次第に下腹部が熱くなり、脚がびくびく痙攣する。


「…は、ぁ…真冬くんの舌きもちいーし顔えっちすぎるし股間にビンビンクる…」

「……ん…っ、ふ、…」


乾いている口のなかが、男の舌で濡らされ、舐められ、ぬるぬる這う。
喉が乾いてたまらなくて、その舌にしゃぶりついた。
そうすれば、興奮したように激しくなって乱雑に押し倒されて口のなかだけじゃなくて全身をぢゅうぢゅう音を立てて舐め回された。


「…はー、肉便器で最底辺の家畜はご主人様を悦ばせてはじめて存在意義をもらえるんだから、ちゃんと使ってあげる俺に感謝してよー?」


肚のナカを指でグチュグチュされながらどろどろとした唾を飲み込まされる。


「…っ、は、……あ、り…と、ござい…ます…」


涙が、薄くにじむ。

うまく動かせない舌を必死に使う。

しかも手を掴まれ、…その、濡れて硬い男のモノを扱かされる。


「あ゛ー、きもぢー…っ、…は、ぁ゛…っ、種付け準備もばっちり、だし…っ、…じゃ、さっき言った通りに俺の方向いて、指でそのやらしい穴開きながら言ってよ」

「…っ、…は、い…」


掌のなかでびくびくっと跳ねべちゃりと手を濡らした感触。

頷き、おそるおそる脚を開いて、上にかかる浴衣をどける。

弱ってかつ体力のない身体では、その動作だけで息切れを起こした。


「……」


グチュ・・・

仰向けで頭だけを起こしたまま、孔に指をかけて、拡げる。
毎日御主人様にも拡げられてるし、さっきこの男の人にも指をいれられたし…拡げるのに…そんなに苦労はしなかった。

羞恥心なんて感情はない。
挿れられるのが嫌だなんてそんな感情もない。


…ただ、どうすれば自分にとって一番良い方法かってことをぼんやりとした頭で考えた。

何日もちゃんとした食事をとってないから、本気でうまく思考が働かなくなっているような気がする。


声の方向を見上げた。
向こうの顔も見えないし、そのおかげでどこか現実感がなくて楽だった。

それでも、少し緊張して唾をごくりと飲みこむ。
身体の震えは相変わらずとまらない。
小さく、怖い、怖いと心が叫んでいる。

自分からこんな格好をしてるくせに、…自分からこんな台詞まで言ってお願いしてるくせに…指が、孔を拡げる指が、震えているのが伝わってくる。

やめたい。やめたい。やめたい。

今すぐ逃げたい。

でも、俺が挿れられたって、誰も困らない。
俺が、俺が怖いだけで、俺以外の誰かが困るわけじゃない。


そう心の中で何回も呟いて、少しでも震えをおさえようとする。

怖くない。怖くない。


…言わないと…言わないと、…もっと酷い目に遭う。
それだけは…いやだ。


震える唇で、言葉を吐いた。


「…ご…ごしゅじんさま…の…お…ちんこを…どう…か……おれの…いやらしい…おまんこのなかに…いれて、きもちよく…して、ください…」



体力がないせいで、途切れ途切れだったけど…でもちゃんと言った。
はずかしくなんかない。

…ただ、少し怖いだけ。


「なんか恥ずかしがってないのが物足りないけど、まぁとりあえずこれでいっか」

「…ぁ…」


両方の太腿の内側に手が触れて、大きく両足を左右に開かれた。

目隠しのせいで見えてないのに、…はっきりと今どういう体勢になってるかわかる。


「あはは、ちゃんと拡げておいてよ。そのとろとろヒクついて誘ってるおまんこ」

「…ひ…ぁっ、」



ピタリとぬめりを帯びた肉棒が孔に押し付けられる。
拡げた指に、入り口に、その感触が、硬くて反り返った性器の感触が直に伝わってくる。
あの時と同じ。
でも、あの時は挿れられなかった。

…今は、違う。



「それじゃあ、今から君のおまんこをおっきいちんこでグチャグチャして、気持ち良くしていきますからねー」

「ぁ…ッ、ぃ…っ」


最近同じことの繰り返しで忘れていた感情が吐きそうなほど、胸を占める。

泣きたくなるほどの恐怖。

徐々に侵入してくる性器の感触に、涙が浮かぶ。
硬くなったモノが、肉を裂いて割って入ってくる。


「ぅ、ゔ…っ、…ッ、…ん、…ん゛ん…っ、」


熱い。
ぬるぬるした感触が気持ち悪い。
吐く。
こみ上げてくる嘔吐感に、口を手でおさえる。

嫌なのに、
次第に硬度を増す自分の性器に…涙が溢れる。


「う、ぉ゛、お、お…っ、…っ、ひ、…っ、やべえって、…っ、ぅ、わ…っ、めっちゃくちゃ、…っ名器、じゃん、これ…っ」

「っ、ンン゛っ、!ん…」

「…っ、入口、は、ぎゅって締まってて、…ッ、奥はとろとろ、だし、ぬるぬる絡み付いて吸い付いてくる…!や、べぇ…っ、なんだよ、これ…っ、…う゛っ、も゛、う、出、そう…っ、」


ジュブっ、!ブチュ!グチュっ!

待ちきれないといったように、硬い亀頭で小刻みに浅く粘膜をかきまぜられ、抜き差しされる。


「うぐ、…ッ、や、べぇ、マジでこれ、どう、ぅ̉…っ、なって…っ、すげぇ、…っ、あんま動かなくても、トロトロ襞に吸い上げられて勝手に扱かれる…ッ、はぁ…っ」

「ぁ゛…っ、や…っ」


苦しくない。
痛くない。
怖くない。
辛くない。

……そう暗示をかけようとしても、やっぱりこみ上げる感情に耐えきれずに、手を床について後退しようとした。
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