3
昨日、学校から帰った後…電話がかかってきた。
その内容は波立っていた感情を更に酷く掻き乱すもので、
”真冬は、俺のことをそういう意味で好きなんだって言ってくれた。だから、付き合ってって言うつもりだ”って。
「…っ…は?」
思考が数秒停止する。
何て、…言った…?
真剣な声音。
耳元に流れてくるのは、最近よくまーくんに絡むようになった男の声。
言葉に、世界がぐらりと歪む。
…冗談に決まってる。
まーくんからそんな話は一切聞いてない。告白するとも言ってなかったし、昨日もいつもと何も変わらない雰囲気だった。
…だから、アイツが嘘を言ってるに決まってる。
なのに、その後すぐ
タイミング良くか悪くか、まるで計画されたようにまーくんから電話がかかってきた。
最初はまーくんからかけてきてくれたことが嬉しくて、ただそれだけだったのに。
「放課後に友達と話す予定があって、…だから明日は先に帰ってていいよ」って言う声は少し緊張していて、…なんで?何かが違う。すぐにそれに気づいた。それに、その話す相手は…今さっき電話がかかってきた俊介って奴で。
(…っ、なんで、こうなった…?)
”まーくんが、告白した”
…多分それ自体は嘘だ。なんとなく直観だけどそう思った。
それでも、男がまーくんに…言ったらどうなるかは、想像できない。…いや想像したくもない、けど…。
……そうは思ったけど、でも、確かにまーくんが他の人間を見る時と俊介という人間を見る時の目は違った。
「…(…もし、まーくんが受け入れたら…)」
麻痺した心に、悪夢のような恐怖が膨れ上がる。
そうなる前に…殺す…?それかあの部屋に、いつも通り放り込んで使い物にならないようにすれば…。
…もしまーくんがあの男を本当に好きになったなら、今から何をすれば元通りになるんだろう。
今あの男がいなくなったら、いなくなったことで余計にまーくんは心は囚われるようになる。絶対に不審に思うだろうし何かすればするほどどうにもできなくなっていく気がする。
(でも、明日アイツが言えば本当に取り返しがつかないことに…っ)
動揺して掻き乱されて。
あの男を、どうにかしないと…、と定まらない思考の中、腰を上げて部屋を出た。
…そして外廊下に出た瞬間。
全部知っているような、そんな顔で狙ったように突然家に戻って来た”あの人”に邪魔された。必死に抵抗しても結局無駄で。
…学校に来た時にはもう遅い。
昨日気まぐれで屋敷を訪れたあの人に殴られたから。
打たれる注射の量がいつもより多かったから。
多分そのせいだ。そのせいで、頭痛が収まらない。
いつもより何かが、思考がおかしくなる。
…嫌な予感がした。
そして次の日の放課後。
既にまーくんと男は教室の中に一緒に居て…先程の言葉を男が放った。
男の言葉に、まーくんは言葉を発してない。
でも…いつ返事をするかわからない。
答えたらそこで終わりだ。
…全部終わる。何もかも、全部終わる。
その表情を見る余裕すらない。
「まーくん、帰ろう」
嗚呼、頭がおかしくなりそうだ。もっと早くに始末しておけばよかった。
まーくんが気づくから、悲しむからとか、そんなこと考えないで。
あの部屋に放り込んでおけばよかった。
「…まさか、あいつと付き合うの?まーくん、あいつなんかいらないって言って。俺だけでいいって言って」
…まーくんには俺だけでいいんだから。他なんか必要ないだろ。
お願いだから、そう言って。
ズキズキと頭痛がして吐き気が込み上げる。
耐えきれなくて、まーくんを抱き上げて他の空き教室に無理矢理つれていった。
「……」
「………」
椅子の上に座らせて、その身体を抱きしめた。
早く安心したい。いつもの日常に戻りたい。
…あいつに会う前の、二人きりの世界に戻りたい。
いつもならそれで落ち着くはずの心が、触れたことで余計に掻き乱れる。
感情がうねりをあげて、劈くような悲鳴を出して、壊れそうになる。
そして……そんな俺の心をまるで知らないまーくんは、言った。
「もしも、俺が俊介のこと好きっていったら…どうする?」
ぶちり。
その言葉を聞いた瞬間。
…何かが、切れた。
理性が音を立ててくずれる。
震える唇が、やっとの思いで声を出した。
「…そ、れは、友達として、で」
…だって、
まーくんが俺に言ったんだろ。
友達じゃないと一緒にいられないって、まーくんが言ったから俺は…っ、
嗚呼、ぐるぐるしている。ぐちゃぐちゃになる。限界で、もう全身がおかしくなる。
頭が 、胸 が、 心 臓が、 体 内が、 身体 、 が
「…俺は、他のやつなんか、要らなかった。まーくんさえいてくれれば、それでよかった」
全部全部まーくん以外はゴミで、価値のないモノで、俺にとっては不要な物。
まーくんさえ傍にいてくれれば、後は何を捨てたっていい。
まーくんが他の誰よりも俺を大切に思ってくれるようになるなら、自分の命を捨てたってかまわない。
自分自身だっていらない。
「俺よりあいつのほうが好きなの?俺の方が、まーくんのこと大切に思って、ずっとまーくんのことを考えて生きてきて、それだけが俺の生きる希望で、そうやってずっと生きてきたのに、……まーくんは俺より、あいつのほうがいいんだ」
自嘲気味に嗤って、吐き出した言葉が更に傷口に塩を塗り付けて抉ってくる。
わかってた。
俺は…あいつに負けてるってこと、まーくんが俺よりもアイツの方が好きで、きっと一緒にいたいのは俺じゃなくてアイツの方で、…俺よりあいつと一緒に居る時の方が楽しそうで、
……まーくんは俺が離れないから、仕方なく一緒に居るんだってこと
本当は俺じゃなくても、傍にいてくれる人間ならだれでも良かったんだってこと、…わかってたのに。
「ずっと一緒にいて、俺の方があいつよりまーくんのことを知ってて、あいつより俺の方がまーくんの近くにいたのに。…まーくんは、俺よりあいつの方が信頼できるって言うんだ。まーくんは、俺より」
俺じゃなくて、他の人間を、
「……あいつを、選ぶんだ」
(嗚呼、…どうでもよくなってきた)
全てを、壊してやりたくなった。
まーくんの心が手に入らないなら…もういらない。
…身体だけでも、俺の モノに、
「……」
「……っ、や、…っ、ん…っ」
唇を塞ぐ。
抵抗しようとする手に触れて、強引に指を絡めた。
無理矢理触って、ネクタイで手首を纏めて縛って、…初めてを奪って、ナカをぐちゃぐちゃにして、泣かせて、苦しめて、犯して、揺さぶって、冷めた瞳で詰ってやる。
「――っ、!!ふぁ…ッや…んぅッ、」
「…まーくんが無理矢理こういうことされて勃起するような変態だったなんて知らなかったな」
「…っ、ちが、おれは…っ、んん゛…っ」
もっと傷つけばいい。泣けばいい。酷いやつだって思えばいい。
身体の奥深くに刻み付けるように、激しく音を鳴らしながら結合部が精液で泡立つほど腰を打ち付けた。
硬くなった自身で奥の奥まで強引に貫いて、繋げて、飽きることなく何度も何度も腰を動かす。
最初はあんなに狭くて固かったのに、今はもうぬめりを帯びてどろどろに溶けたやわらかい内壁が俺の性器を離すまいと吸い付いてくる。前立腺を擦り上げるたびにキツく締め付け、奥壁を押しつぶすように何度も何度もグチッ、ぬぢゅ…っ、ゴリゴリと潰して擦り上げた。
強すぎる快感のためか、角度を変えて激しく奥を突くたびに、これ以上は無理だと泣き声か喘ぎ声かわからない呂律の回らない言葉を声に漏らしながら尻を引こうと抵抗する。
涙を零しながら絶頂し、ぎゅーぎゅーナカで締め付けながらも嫌がるまーくんを逃がさないように、括れた腰を掴んで股同士を押し付けるように律動をする反動を使って引き戻した。
何度も突き上げていれば、結合部の上部でぶらぶら揺れ、壊れたように出続けている精液は色も薄くなって最早透明になっていた。
お互いのはだけた制服が、ワイシャツが、教室の床が回数を増す毎に汚れていく。
より深くその奥のまだ狭い内壁を自分の性器の形へと変えてグチャグチャに犯した。
「…っ!!う…っあぁ゛…ッ、あ…ッ、や…、だ…っ、ぬい、て…っ、…」
…馬鹿だな、まーくんは。
俺みたいな男は、そうやって泣きながら抜いてって言われると余計に激しくしたくなるんだよ。
わざとらしく水音を立てながら、まーくんの勃起して不規則に精液を吐き出し続けるソコをじゅくじゅくと上下に扱く。
「ぁ゛、ぅ、…っ、ぐ゛…っ、ぃ…っ、――っ、ぅ、゛、ぅ…っ、」
「だいっきらい」
そうなれたら、どれだけ楽だろう。
嫌いに、なりたい。
どうか、そうなれるなら今すぐにでもそうして欲しい。
嫌いになれたら、そうなればまーくんをこんな風に苦しめなくて済んだはずだから。
自分に言い聞かせるように、何度も大嫌いと吐き捨てる。
「ぐ、ぅぅ゛、やめ…゛っ、ん、っら、ん゛ぁあ…っ、!っ、――ッは、ぁ、あ…」
「…ッ、」
声を上げて、俺に見られないようにと顔を背ける。
でも、正常位だから全部丸見えでそんなことしても無駄なんだけどな。
何度も内壁を擦り上げてスピードを速めていると骨盤が一際甘く痺れ、堪えようとしても息遣いが漏れる。本能に従って、腰の打ち付け方を変えた。
律動と突き方が変化したことに気づき、まーくんが涙で濡れた顔に更に恐怖の色を滲ませていやだ、と震える声を零してふるふると首を振った。
「や゛、ぅ゛、ぅ…っ、…ッ、や゛、ら゛ぁ゛っ、ぁ゛、ぁ゛……っ゛、な゛、か…ッ、には、ださ、な゛…――っ、」
(…出さないであげてもいいよ。)
まーくんが俺の願いを叶えてくれるなら。
…でも、無理だってわかってるから。
その代わりに酷くして、俺のことを嫌だって思うくらい思い出しながら毎日泣けばいい。
俺を恨んで、憎んで、心底嫌いになればいい。
だから、全部出してやるよ。
「出されないように、精々抵抗してみれば?…っ」
声を出す、…息をする暇さえ与えない。
「はぐ…っ、ぁ゛っ、や゛、ぅ゛あ゛ぁ…ッ、!!ぁ゛ッ、あ…!」
躊躇ったりしない。
速度を速めていると、不意に性器内の体液を全て搾り取るように肉が吸いついてくる。
容赦なく出された欲の塊を受け入れる後孔は熱が奥に放たれた瞬間、ビクッ、ビクッ、と頬を上気して性器を挿入された全身が大きく震えたのと同時にぎゅう、とキツく締まる。
ぶるりと震えたまーくんは、ぐったりと身体から力を抜いた。
荒く息を吐いて、顔を背けながら瞼を閉じる。
その閉じた瞼から涙が頬を伝って零れていった。
もう今ネクタイを解いても、逃げることはできない。動く体力さえ残ってないだろう。
一度腰を引いて、自分の性器とその孔から白い液体が糸を引いてとろりと流れるのを無表情で見下ろした。
「……っ、…休んでないで、もう一回股開いて俺の相手してよ」
「…ぇ…っ、?っ゛ぐ、ぅ…ッ!!ぅ、ぁ゛、ぁ、!も゛、やだ…ぁ゛っ!も゛、む、り゛…ッ!!!ァ゛あ゛…ッ!!が、ぐ、ぅ゛ン゛ぁあ゛あ゛…――ッ!!」
一度で終わると本気で思っていたのだろうか。
…そんなんじゃ、終わらせない。
こんな程度では、まだまだ足りない。
もっと、もっと刻み付けておかないと。
首筋に唇を這わせて、キツく肌を噛む。
痛いのか、唇の触れている身体から小さく悲鳴が上がって震えが伝わってくる。
まーくんだって、これで終わったら物足りないだろ?
「あはは…ッ、まーくん、本当に嫌だと思ってるの?こんなにトロトロにして、ぎゅうぎゅう締め付けてるくせに」
「…――ッ!!ぁぅっ、ゔ、ぅ…っ!ひ、ろ゛…い゛、ぃ、っ」
絶えずその縁から涙を零す潤んだ瞳が、恨みがましく俺を睨み付けてくる。
…ほら、今まーくんは俺のことだけ考えてる。俺のこと以外を想う余裕なんかない。
嗚呼…ゾクゾクする。
胸が熱く震えて、苦しい。
最初からこうしておけば良かった。
(…俺でいっぱいになって。他の事なんか考えられないようにしてあげる。)
………そうしたら、俺のこと…一生忘れられなくなるだろ?
そして思う存分まーくんの身体を犯して、気絶するまでその身体を蹂躙した。
―――――――
もう、後戻りできない。
[back][TOP]栞を挟む