俺だけを求める君が欲しい。
暗い部屋。
月の明かりも注がれない。
電気もつけず、ずっと部屋の隅でベッドの上で悶える様子を離れた場所から座ったまま片膝を立てて見据えていた。
あの日の思考通り、注射を打った。
何度も何度も何度も何度も、
頭をおかしくしてでもまーくんに振り向いて欲しくて。
四日前も、三日前も、二日前も、昨日も今日も、薬を通常量より多く打った。
…それだけじゃない。まーくんにあげるご飯にも、飲み物にも、出来る限りの色々な薬を混ぜた。
「…ら、だ…ッ、ァ゛ぁああ…ッ、はァ…ッ、」
「無駄だよ。気持ちいいなら我慢しないで声出せばいいのに」
ずっと壁に預けていた背を離して、ベッドの方に歩く。
傷がなるべく酷くならないように、時々声を漏らす、血が滲むほど噛んでいる唇の間に人差し指を差しこんだ。
…涙とか汗でグチャグチャになった目隠しを瞼の上に巻いてだらしなく唾液を時々零して喘ぐまーくんの濡れた唇に指を突っ込んでいるとそれなりに感じるものがないわけじゃなくて。
やわらかい唇に挟まれる指先に、…少しだけよからぬ欲求が湧きそうになる。
「何回目の寸止めだろうな。…今日は25回目くらい?」
2日前くらいからずっと寸止めを繰り返させていた。
「あと20回寸止めしたらやめて休憩してもいいよ」昨日俺がそう告げた時のまーくんの表情は今まで見た中で一番絶望に満ちた表情で。
そして、それから結局一度もイけていない。
「どうしてこんなことになってるかって?」
「ひッ、ひっ、ぁ…ッ、ひ…ッ、」
「……さぁ、なんでかな」
俺だって知りたいよ。と胸中で矛盾を呟き、瞳を暗く陰らせながらクスリと笑って微笑を浮かべた。
ベッドに腰かけたまま、その髪を人差し指に巻き付けて遊ぶ。
何日もこうしているからサラサラだったそれは汗でびっしょりで今は濡れていた。
お風呂に入れてあげたいけど、こうやって射精管理している時に入れちゃったら気分的にもリセットされて勿体ないし。
注射を何回か打ったせいで外からの刺激に酷く弱い身体は、ビクビクと腰を跳ねさせながら小さく震えて「らる、へれ…」もうやめてと、腰かけたせいでベッドが重みで沈んだためのと声で俺の位置が分かり微かに顔を向けて弱々しく助けを乞う。
枷を手首に嵌められた手が、求めるように少しだけこっちに伸ばされてきた。でも力が入らないらしく、ほとんど動いてない。
まーくんに以前貰ったネックレスを手首につけた腕を持ち上げて、受け入れるように触れて指を絡めた。
「ら、めららい…っ、ごめんな、らい…ッ、ゆるひれ、くらは…い…ッ、」
「…終わらないよ。前も言ったけど、これはいつもみたいにお仕置きしてるわけじゃない。だから謝ったってやめないし、何の意味もない」
「…ッ、ぅ…う゛ぅ…」
「泣かせてごめんな。…こんなことしておいて言うことでもないと思うけど、許されないことをしてるってことはちゃんとわかってるから」
…全部分かってて、やっている。
ここまでしておいて、まーくんに薬まで打って、許してもらおうと思えるほど傲慢には生きてない。
ガチャガチャ…ッ、抵抗する身体をどんなに動かしても無情に伸び縮みしない鎖が激しく音を立てた。
後孔深くにまで届かせたデコボコバイブは中途半端に挿入したまま紐で固定させておいた。
だからいかに強く腰を引いても抜けない玩具から与えられる快感は変わらずに、狭い内壁に埋まったまま微弱な刺激を与え続ける。
尿道に挿入したバイブも同様で、抜けないように固定しておいた。
「でもこうやって機械的な刺激ばっかりだと、まーくんの好きな部分に当たらなくて苦しいだろうから…」
「もっと激しくしてあげようか」とツンと外からバイブの柄の先を指先で押す。
笑みを浮かべて口にした言葉に、期待するどころか拒否するようにその首がぶんぶんと横に振られた。
…なんでそんなに嫌がるんだろう。と考えるまでもない。
思い当たる記憶はある。
昨日も俺は同じことを言って、でも結局一瞬だけは激しくするけど一切イかせなかった。
救われたと思っただけに期待を見事に裏切られたまーくんの荒れ様は酷かった。
余計に快感だけが増して、でも絶対にイクことは許されない。
ただもっと苦しい状況に陥らされただけだ。
今もわざと前立腺とか他諸々まーくんの感じる良い部分よりわずかにずらして固定させてあるから、どれだけまーくんが懇願しても永遠にイけない地獄が続いていた。
最初、開いて立たせていた脚は力を失くしてベッドに倒れ、ビクビクと時々跳ねる。
汗ばみ、むき出しになっている太腿に指で軽く触れる。
「俺がやりやすいように股開いて腰、浮かせて」
昨日と全く同じ指示。
逆らっても良いことはなく、逆に嫌なことが待ち受けていると身に染みたらしいまーくんは、大人しく言う通りに従う。
…そうだ。
ちょうどいい時間になってきたし、もう一回打っておこう。
粘膜が絡みついている尿道バイブをズルっと引きぬいた。
引き抜いたのに、そこから出てくる精液は一滴もない。
でも先走りでぬるぬるしてて手で支えづらいうえ、昨日の精液が渇いて残っていた。
注射器を持って、つぷりと針先を当てて液体を挿入する。
……今朝も打ったばかりだし、今日は少なめにしようかな。
打った直後にただでさえ勃起していた性器がさらにムクムクと大きくなって硬くなる。
ビクビクと打ち上げられた魚のように震えて痛そうな程薄く血管が浮かんだ。
一応、注射する前には自分にも同じ分の投与をして身体に起きる変化と、死なないことを確認している。
そうやって同じことをすることで多少はまーくんをこんな目に遭わせている罪悪感を紛らわせていた。
…俺が望んでやってることなのに、罪悪感とか本当どうかしてる。
ついでに傍にあった注射器を、自分の腕に刺した。
「…っ、」
少しの痛み。
こっちは毎日のように屋敷で打たれているもので、さっきのとは別の作用の物。
…こうでもしないと、こんな状況で正気を保っていられない。
そうしていると、以前寸止めをし続けた時に死ぬかもしれないって言葉をまーくんが言っていたことを思い出す。薬を投与していることを考えると、今回はあの時の比じゃない。
今度こそもしかしたら死んじゃうかもな。
「…そうしたら、俺も一緒に死んであげる」
投薬量は一緒だから怖くないよ。と全く安心できないだろう言葉を心の中で呟いた。
「…ッぁ゛、ぁ、ひ、ぃ、や、ぁ!ぁ!」
「……」
無表情のまま、なんとなくグポッと後孔のバイブを抜いて何度か抜き差しする。
でも、ゆっくりと動かすからまーくんの腰が勝手に動いてイキたいイキたいと機械に前立腺辺りを擦ってもらおうとする。…「腰動いてるよ?」と嗤っても、最早俺の言葉が聞こえていないのか喘ぎ声だけを零しながら無我夢中で何度も腰をヴヴヴと振動する機械相手にイかせてもらおうと誘っている。
…まーくんはこんな無機物にまで色目を遣うんだ。
よくわからない嫉妬に身を焦がして、そんな自分をどうしようもないと呆れて笑う。
「…ッ、ひぁ…」
「…玩具に弄ばれ過ぎて、まーくんのココ…トロトロしてる。いつか本当に溶けそう」
試しに人差し指を挿入してみる。
…さっきまであんなにでかい機械を飲みこんでいたくせに、今は指を包み込むようにぎゅうと指を締め付けている。
でも、やはり指一本では物足りないらしい。
切なそうに収縮していて、まだまだ余裕がありそうだった。
もう一度バイブでその身体を数秒弄んで、身体が軽く痙攣し始めてきたところでバイブを抜いたまま刺激を与えないでしばらく放置。
…強くやりすぎちゃうとすぐにイくから加減は気をつけないと。
で、また落ち着いてきたころに弱く少しずつバイブで弱いピストンを繰り返す。
バイブを抜いた瞬間、「ぁ、う…」と絶望の塗れた声と同時にただでさえ濡れまくっている目隠しの布に更に新しい水分が増える。
本当にまーくんには悪いと思うけど、そうやって絶望して泣いてるところを見ると申し訳なさ以上に他の感情が勝る。
でも、こう思えるのは他の手でなく俺によってこうなってるってことが最低条件だけど。
イきそうになると、一層激しく自分から腰を押しつけてぶるぶる震えている。
(…でも、そうはさせない)
「まーくん」と声をかける。でも最早意識を保てているのかも怪しくて答える声はない。
…む、と眉を寄せて無理に唇を塞いで、舌を貪って意識をこっちに向けたところで、もう一度声をかけて問う。
「欲しくなってきた?」
「はお…ッ、はおひ…っ、」
何を、とは言わなくてもわかったらしい。
ま、3日前も似たようなことをしたから頭がうまく機能しなくても身体が覚えていたんだろう。
すぐに返答が返ってくる。
「……鎖、外してほしい?」
「ん、ん…っ!はるりれ、…ッ、」
10回、…いやもっと寸止めしたことで、まーくんの反応もいい感じだし、そろそろ良い頃合いだと判断した。
寸止めは前試した時に効果的だってことが実証されてるから、比較的安心してできる。
全く同じやりとりに、目隠し越しにでもわかる今度こそ期待に満ちた表情。
もしかして、と上気した頬でこっちを見上げてくる顔に薄く微笑む。
「俺の身体、好きに使っていいよ」
我慢できた子供にご褒美を与えるように、頭を撫でて甘く耳元で囁いた。
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