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でも、別にそんなこと自分にとってはどうでもよくて。

行き場のない感情のやり場を求めて、上を見上げる。
空がほとんど雲で隠れていて、晴れている様子が好きな自分からすると少し悲しい。

(せっかく外に出られたのに、こんな日にかぎって曇りなんだな)

息を吐いて、空に昇っていく白い吐息が感慨深くてつい目で追ってから視線を戻す。
仲親密気に会話をする二人の姿。

……そういうことをする相手がいるなら、今すぐ解放してくれればいいのに。

色味のない視線を二人に向けていると、蒼が振り返った。


「今日はお姫様がいるから無理」

「え…っ」


にやりと笑う蒼と、意表を突かれて驚いたような表情をする男子生徒に、思わず逃げたくなる。

”お姫様”なんて、1年前までは言われたことすらなかったのに。

何度そう呼ばれても、やっぱり慣れなくて。
呼ばれるたびに、どうしようもなく空しくなる。
俯いて、新品の今日渡されたばかりの鞄を握りしめる。


「まさか、付き合ってるわけじゃないよね?」


疑うように、苛立ちを露わにしたその声音にさらに身を竦ませると、肩にまわされた手にぐいと抱き寄せられた。
頭を首元に押し付けられて、蒼独特の甘い香りに眉を寄せる。

いつもならすぐに離れようとするけど、
登校する生徒がこの状況をどんな視線で見てるかなんて知りたくなくて、見なくて済むことに少し安堵の息を漏らした。


「さっき言っただろ?俺にとっての”お姫様”なんだって」


優しく髪を撫でられる。
普通好きな人とか、少しでも気のある人に言われたりしたら、ちょっとくらい嬉しいんだろうけど。

相変わらず、何も感じない。
蒼に対してそういう感情がないんだと改めて実感した。
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