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「…、(…ぅ、)」


浴衣の裾を握ってまくりあげようとして、ぶるぶると異様なほどに震えてしまう。
ぎゅううと指の先が白くなるくらいまで掴み、意識しすぎて熱くなる頬を隠すように顔を背けた。



「…まーくん」

「…ぁ、あう、わかってる、から、」



見えて、しまう。
くーくんに、こんな、おれの恥ずかしい部分を、見られてしまう。

言われた通りに、下の方の浴衣をゆっくり持ち上げた。
脚の方を見るのも嫌でそっぽを向けていた視線をチラ、と下に向けた。

普段でも着崩れてるから脚が見えてる時もあるけど、その時の比じゃないくらい…なんというか、見えてはいけない部分の太腿までくーくんの目に晒されている。

…もし、くーくんへの色仕掛け作戦!とか目的があればここまで緊張しないのに。

ぶるぶるぶる、と全身が震えて、あまりの恥ずかしさにすぐに逃げ出したくなってきた。



「まだ全然見えてないよ」

「…う、うう…っ、」



あまりにも震えて恥ずかしがるおれに、可笑しそうに笑いを交えた声。




「…これぐらいで恥ずかしいの?精液下さい、なんてそれ以上に恥ずかしいこと言ったのに」

「…っ、…」



追い打ちをかけるような台詞を言われて、瞼に、薄い涙の膜が張るのがわかる。


ついさっきまでただくーくんとべたべたしていただけの部屋で、おれは浴衣をまくって、…その、股の間にぶらさがっている…せ、性器を見せようとしてて、

なのに、反対に彼はいつも通りの格好で、何も着崩れていることもなく……座ったまま冷たい表情でおれに指示していくだけだ。




「もっと」

「…っ、」



短く要求された言葉に、浴衣をもちあげていた指に、きゅ、と力が入る。



「俺から見えるくらいに」

「…っ、う、ううう…」



淡々とした口調に、もう限界なのに、これ以上上げたら本当に丸見えになってしまう、と滲む涙を堪えきれずに瞳から零して小さく非難のような声をあげる。

くーくんに助けを求めようとすると、容赦なく跳ね除けられた。



「泣いてもだめ」

「…っ、ぅ、くーくんの、」


(意地悪…っ、ばか…ッ)


言葉にすると本当に泣き出してしまいそうだったから唇を噛むだけで収めた。

泣けば、謝れば許してくれるなんてそこまで甘いこと考えてないけど。
でも、いつもなら、ぎゅってして、抱きしめてくれるのに。

…おれ、そんなに怒らせるくらい悪いこと、言った…?



「何?」

「…なんでも、ない、です…っ」


ぐじぐじと袖で涙を拭って、もう一回、今度は帯を緩めてもっと上まで引き上げた。
肌をなぞる空気の感触が増えて、性器に直接触れる風がこれ以上ないほどに羞恥心と惨めさを募らせてくる。


絶対に、見えてる。
見られてる。


太腿とかそこらへんだけじゃない、ソコの、部分が…、



「…っ、(…恥ずかしい、やだ、こんなの、やだ…っ)…」

「………」



絶対に、沸騰しそうなほど顔が赤くなってる。
拭ったばかりなのに、また涙が頬を零れ落ちた。

意識しているせいで、性器にまで熱が集まっているような気がする。
反応、…しそうになる。

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