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そして、ピン、と反りたって尖りはじめていた乳首に触れた指が、そこを優しく撫でるように動く。

声をあげたいけど、唇を塞がれているせいで、ただ身体をビクビクと震えさせるだけになった。


「…っ、ん゛ん…っ、?!」


…ぐりぐりと指の腹で押し潰される。…と、彼に押し付けていた先走りでどろどろになっていただろう性器がビクっと跳ねて、白濁液を零した。…それが、じわりと彼の浴衣を汚して染みになる。


(…っ、…むずむず、する、それに、…息が、苦しい…)


は…っ、は…っ、とお互いに荒く息を吐いた。
段々中から膨れ上がってくる、熱いもの。刺激が欲しくて…我慢できなくて彼の腰の辺りに勃起した自身をぐりぐりと擦りつけると、…ふ、と彼が嬉しそうに笑みを零す。

身体の線になぞって下におりていく手が、不意にお腹のわきばらのあたりを指先でなぞるから「…ん…っ、」と鼻にかかったような吐息が漏れた。

…くすぐったい、けど…その手の感触が、きもちいい。

そうして、腰の辺りにつーっと悪戯に触れてくる感覚にゾクゾクと身体を震わせる。


(…直接触ってるわけでもないのに、また、出そう…)


下腹部がきゅん、と疼いて、ぺろ、と犬みたいにくーくんの唇を舐める。
…もっと、と求めるように舌を絡めながら、おれも彼の浴衣の隙間から手を差し入れ、

抱き付こうとした


その…瞬間、


「…………(…ぁ、)」


ハッと恐ろしいことを思い出してしまった。

青ざめて、一気に全身から血の気が引く。

…そして、急いで身体を起こして離れようとすると、「や…っ、ちょ、ふぁ…っ、」後頭部を掴まれて唇を重ねられたせいで、その行動は許されなかった。



「…まーくん…、可愛い…、」

「んぁ…っ、は…ッ、ま…っ、」


今更こっちだけ冷静になっても、くーくんの一度入ったスイッチがそう簡単に止まるはずがない。
…散々それを味わったから、特にそういう時の彼を止めることの難しさを知っている。嫌というほど身に染みている。だから、どうしようと唇を震わせた。


そして、

今になって、実感する。


「…ん゛、は…っ、」


キスの最中に舌先を甘噛みされて、ぶるぶると震えた。
さっきまでノリ気だったし、自分から頑張って参加してたから気づいてなかったけど。


(…おれたちって、こんなに激しくキスしてたのか。)


それこそ、「ちょっと待って、」と言う間もないくらいに、唇を重ねまくっていた。
頭がくらくらする。
激しく相手を求めるような、獣のようなキスの繰り返し。
焦りとパニックで、さっきまでかろうじで息継ぎできていたのが、不可能になった。


(…それに、)


気のせいかな。
…おれが離れようとしているのを察したのか、…余計に口づけの濃度が上がっている気がして、



「…っ、ぁ…の、くー…っ、くん、」

「…今更やめてって言っても、…もう遅いよ」

「…ぁ…っ、んぅ…っ、は…っ、」


水を差されて不機嫌に眉を寄せる顔。

全部言い終わる前に、言葉を被せられた。
そもそも何かを言わせる気なんかさらさらないらしく、何度も何度も唇を塞がれた。
唇の端から唾液が零れても、それを意識できないくらい…激しい。


…うん、…間違ってない。くーくんは一切間違ってないし、もしおれが逆の立場だったら凄く怒ってると思う。


自分から誘っておいて、本当に何考えてるんだよって思うだろう。

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