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目の前で瞼を閉じている綺麗な顔に、瞬きも忘れて一瞬硬直する。
唇に押し付けられた、やわらかい感触。
…それは、くーくんの、もの、で、
「…っ、！！」
(…わ、ぎゃ、？！)
呆然としたまま驚いて息を止めている間に、かたく閉じた唇を割って入ってこようとする舌。
心の中でそんな色気のない声を上げて、逃げようとしてしまう自分に鞭を打つ。
…抵抗なんて、するはず、ない。
ドキドキと怖いくらいに高鳴る胸を感じながら、……少しだけ、唇を開いた。
直後、ぬるりと侵入してきた舌に、びくっと肩が勝手に跳ねる。
「…っ、ぁ、…ふぁ…ッ、くー、…っ、」
「……は…っ、」
「…ん…っ、はぁ…っ、ぁふ…っ」
…腰が砕けそうになるまで、ほんの一瞬だった。
下腹部がキュン、と震える。
ぎゅう、と彼の服の裾を握っていた指にさえ、力が入らない。
…息を吸う間隔もないくらい激しく口内を舌で荒らされて、すぐに酸欠で視界がぼやけてきた。
ぼろぼろと涙が零れる。
やっぱり、ちっちゃい頃より断然くーくんはキスがうまくなってて、…なんか、…凄く悔しい。
（…色んな人とこういうことしてきたから、…だから、こんなに上手になったのかな。）
……考えてもどうしようもないことだけど、気になってしまうものは仕方がない。
ズキリと縄で締め付けられているように痛む胸に、眉を寄せた。
「…っ、は…っ、ぁ…っ、んん…っ、」
でも、そんな思考も一瞬で、巧みなキスによって、すぐに目の前に強引に意識を戻される。
零れる熱い吐息。
歯茎をなぞるように舐められて、ゾクゾクと背筋に甘い痺れ走った。
唇の端から零れた唾液が涙と一緒になって顎を伝って落ちる。
(…くーくん、…大好き、)
キスすればするほど、その感情は強くなっていくような気がした。
じわじわと胸に染み込んでいく。
幸せなはずなのに、胸が苦しくて、何故か切ないような感情に襲われる。
…お互いの舌同士が触れる感覚が、口腔内が犯される感覚が、気持ちよくて、
(…ま、た…)
全身が熱くなって、下半身にその熱が怖いくらいに集まってきた。
…口づけが深くなる度に、性器が痛いくらいに硬くなっているのが自分でもわかった。
でも、その感覚さえも気持ちが良い。
下腹部全体に快感の塊が膨らんでくるような、快感が内部にキューっと高まるような感覚が、広がってく。
…と、少しだけ閉じていた瞼を開いて、
「…――っ、」
涙で滲んだ世界。
だけど、キスの合間に見える、…熱を帯びて、欲情しきった獣のような彼の瞳に、目を奪われた。
（…嬉しい。）
…歓喜の感情のまま、自分から彼の首に腕を回して、ぎゅっと抱き付く。
そうすることで自然と唇を押しつけることになる。
必死にその舌に応えようとしていると、
…一瞬動きを止めた彼が、ふ、と目を細めて、舌先にちゅう、と吸い付いてきた。
舌をもっていかれるような感覚。それを怖いと思うのと同時に、相手に求められている感じがして、余計に興奮する。
「ん゛、ふ…っ、」
「…は…っ、まーくん、の…顔…やば…」
「…っ、」
息継ぎの合間に少しだけ唇を離したくーくんが、頬を上気させて微笑む。
対して、おれにはそこまでの余裕がないから、おれにできることといえば…虫の息になりかけていた呼吸を整えながら小首を傾げることぐらいだった。
「…やば、…い…って…？」
それだけでも酸素が足りなくて、息が乱れる。
「…俺の知ってるどの言葉でも表現できないくらい…エロいよ」
「…っ、」
唇にかかったその吐息と言葉に、また頬が熱くなる。
『…誰が見たって、おれよりくーくんの方が、…すっごくえっちな顔してるのに』
そう言い返す間もなく、
「ッ、」
唇を奪われた。
舌に歯茎をなぞられ、今度は唇を彼の唇ではむはむと挟まれて甘噛みされた。
そのくすぐったいような、変なふわふわとした感覚が、身体を震わせる。
…脳内も蕩けてしまいそうだった。
「…俺だけ、だよ」
「…っ、ふ、ぇ…？」
「まーくんのそういう顔、見ていいのは俺だけだから」
耳たぶを唇でなぞられながら囁かれた…独占欲を露わにしたような台詞。
「――ッ、」
こんな状況で、そんなこと言われたら、こっちだって我慢できるわけがない。
「…うう…とりゃ…！」
「…っ、」
…真っ赤になってぶるぶる震えながら、全体重をかけて抱き付く。
飛びつくように体重をのせたから、そのせいで彼を押し倒す格好になった。
「…好き、くーくん…大好き、」
「……」
おれの言葉に、彼がまた泣きそうな顔をする。
多分、おれも泣きそうだった。
好き
好き
…大好き
想いが溢れすぎて、今すぐにでも頭がおかしくなってしまいそうだ。
涙を堪えながら、…彼の頬を手で包み込んで、自分から唇を重ねる。
馬乗りみたいな恰好。
下着を履いてないせいで、剥き出しのまま、勃起して硬くなった性器を自然と彼に擦りつける体勢になる。
「…っ、」
キスとは別に、
乱れた服の中に入ってきた手が、愛撫するように、なぞるように、肌に触れてきた。
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