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…どうして、こんなことになっているんだろう。
「…ぁ、…」
「ああ、いつ見ても君の身体は何かのはけ口にされていてとても綺麗だ…」
恍惚とした声と興奮をまじえた吐息。
後ろから抱きすくめてくる手が、身体中に刻まれている傷を厭らしい手つきでなぞる。
首筋に唇で触れられ、吐息を吹きかけられた。
傷口に、手が、触れる。
「っ゛、ぃ、だ…っ、」
「ふふ。このままここに爪を立てて抉ってしまいたいなぁ…。けど、もし血が出て…こんな場所でこうしてることを彼に知られたら…お互いに困るもんね?」
解かれ、床に落ちている幾つもの包帯。
塞がったばかりの傷口を指の腹でぐりぐりと擦られ、ぴりっとしたような鋭い痛みにびくんっと肩が跳ねる。痛い。痛い。痛い。痛みに身を捩り、顔を顰めた。
裂けた肉に指を埋めるように、ナカの赤い肉を荒らすように、ぐちゃぐちゃ、べちゃ、ぐりぐり。
…おかあさんにはもので切られて、焼かれて?
おとうさんに殴られたきずを、ちりょう…して
おれの、おかしなとこもなおしてくれる…せんせい。
「ぁ゛、ぃ、ぁ…っ、」
血は、滲んでいない…らしい。
だから、 には絶対にばれないよ、ってせんせいが言う。
けど、それでも、裂けていた場所をあまりにも長く弄ぶように擦られ、永遠と与えられる激痛にぼろぼろと涙を流した。泣き叫びたくなるほどの刺激に吐き気が込み上げた。
声はその苦痛の呻きを愉しんでいるように笑い、お腹の下ところまでずりさがっていた浴衣の紐をするりと解かれる。
「お尻あげて?」
「…っ、で…も、」
……さっき飲んだ白いお薬のせい、なのかな。
人形のようにただされるがままで、
縫い付けられているみたいに静かだった口から、微かに零れる抵抗の声。
けれど、
「――お尻をあげなさい。ね? 真 冬 く ん」
「…っ、…ぁ、ぅ、」
反抗を許さないせんせいの声が、途端に冷たくて低い無機質な声に変化した。
それを聞いた瞬間に、全身が震えて、身が竦んで、眩暈がして、
「……は、い。…せん…せ…」
「そうだね。それでこそ私の愛しい真冬くんだ」
こくんと素直に頷き、気づけばお尻を持ち上げていた。
するすると脱がされた浴衣がぱさりと床に投げ捨てられる。
「こっちを向きなさい」という声に従い、ゆっくりと後ろを振り向いた。
「何年ぶりだろうなぁ」
「……?…っ、」
顎を掴まれ、唇を塞がれた。
ねっとりと舌を絡ませられ、顎から下にどろどろとした唾液が零れ落ちる。
無意識に眉が寄り、込み上げる不快にも似た感情に息が詰まりそうになった。
それから、口が離れたと思った瞬間に両脚を持ち上げられて、まるで赤子のように下着をするすると脱がされる。
肌を隠すものがなくなり、全てが露わにされた。
…生まれたままの、自分の姿。
なのに、
恥ずかしいなんて感情はなくて、ただぼんやりとぬいじゃったせいで寒いな、って思っていた。
「またそうやって…。はぁ…これは君のためにもなることなんだって、何回言ったらわかるんだ?」
「…おれの、ため…」
無意識に手がせんせいの身体を拒もうと伸びていて、それを取られて指と指を絡めるようにして繋がされる。
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