9


(なんで、…っ、なんで、指入れて…っ、)


痛い。痛い。
そんなところ、指を入れるところじゃないのに。

少しずつ入ってくる指の感触に苦痛の混じった声が抑えられない。

…痛い。ぎちぎちに閉じた肉がぬるぬる拡げられていく感覚が、怖い。
内壁を全部ごりゅごりゅしながら先へ進んでくる。

苦痛で涙が溢れる。
ぼろぼろと溢れて、とまらない。

痛い、痛い、と泣きながら叫んでも、蒼はやめてくれるはずもなくて、


「あおい…っ」

「…何」


相変わらず冷たい声で返されて、震え、更に涙が零れる。

……俺のことなんて、蒼はどうでもいいのか。
本当に、そう思ってるのか。

なら、…俺に意味なんかないなら、もう全部どうなってもいいんじゃないか、と一瞬本気で思った。

でも、


「…っ、ゔ、ぁあ…っ、それ゛、や゛、め…っ、ンン゛ぅ…っ、」



指の根元まで差し込まれるようになると、手の平の感触が会陰部に触れる。根元まで入れてお腹の内側をごりごり押され、細かく前後に振動するように摩擦される。

肉壁で纏わりつきながら抵抗する腸圧に逆らうように指を動かされ、グチャグチャ鳴らしながら、もう一本増えて挿入されたのがわかった。

その繰り返しに、何か目的があってやってるような気がして怖くなってくる。

ナカの隙間を拡げて埋められ、擦られ続けていると苦痛でなく何か別の熱が下腹部を疼かせ、腰を震わせながらぎゅうと指を締め付ける。

何故か射精前と似たようなぎゅーっとした感覚がゴリゴリ押されて擦られている場所から生じて広がり、ブルブル震える。


「ぁゔっ、ぅゔ…っ、…なに、…する、の…?」

「何、って。…ああ、そっか」


前ふとした瞬間に話題になり、凄く綺麗だと女子達にも言われていた手。
外見が美しいと手も同様に綺麗なのかと感心した。

感情のままそれを伝えれば、嬉しそうに微笑んで返してくれた、……その蒼の手が、指が…俺の肚を犯している。

あれが遠い昔のことだった気がするほど、今起きている現実があまりにも信じられなかった。

よくわからないのに次第にぎゅって下腹部が疼きお尻がジンジンする感覚に耐え、長い指でぐぽぐぽぐちゃぐちゃされながら必死に声を上げる俺に、彼は不思議そうにして、ひとりでに納得したように頬を緩める。


なに。

なにを、する気なんだ。


俺のナカを掻き回していた指を止め、「へぇ」と何故かひどく楽しそうに笑みを零す。
唇の端は上がっているのに、その目は相変わらず冷たい光を放っていて、熱を上げている身体と対照的に背筋を冷たいものが走る。


「まーくん、知らないんだ」

「し、しらな…っ、ぁゔぅ、…っ、ぐ…っ、ぅ゛ンン゛…っ、!」


聞き返そうと尋ねた瞬間、二本の指で激しく内側の肉襞を摩擦されて、弄られている場所から全身に伝わる脳天が痺れるような感覚に耐えきれず腰が浮く。
凄まじい快感に泣き叫んで苦しみもがきながらやめて、やめてくれと懇願する。

(…なに…っ、なんでこれ、お尻の穴で俺こんなに、変な…っ、)

身を捩って逃げ出そうとするも、がっちりと持ち上げらている右足を抱きかかえている腕は離されない。
ナカを掻き回される衝撃にどれだけ暴れてもすぐに引き戻されてしまった。

グチャグチャと最早後孔から聞こえるはずのない淫音と、どんどん増やされていく指で執拗に腹側の内壁を強く擦られる。

グポぐポされ続ける間、尻に何か温かいものが量を増やして滴り、かき混ぜられる度に腰がびくついては背中をのけ反らせて悶えた。
足をばたつかせるほど気持ち良いのが怖くて、自分の身体なのに、何が起こっているのかもわからなくて怖い。


「ぅゔぅ…っ、ぐ…っ、ん゛ぅぅ…っ、ゔゔ、っ、」

「あはは。まーくんの中、ひくひくしてる」


指でナカを開かれて空気が入ってくる。
拡げられていることを実感し、羞恥に顔を背けた。

その嘲るような声を聞いて、痛みや快感とは違う感情によって涙がぼろぼろと零れる。
prev next


[back][TOP]栞を挟む