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ほのかにぬるい風が晒された肌を撫で、実感させる。


「…――っ、ぁ…っ、あ゛ぁ…ッ」


首筋に押し当てられたそれが、食い込む。
歯を押し当てられ、牙が肌を噛む。

(痛、い…っ、)

やっとのことで離れたその歯は、強く余韻を残していた。
肩を上下させながら、ジンジンと鈍く痛む箇所に涙が零れる。
舌でそこを舐められれば更に傷口から染みて身体が震える。


「…初めから、この感情は…好きなんて気持ちじゃなかったのかもしれないな」


その声は、小さくて。
耳を澄ましていなければ、聞こえない程の大きさだった。
内容に反して、自嘲じみた声音。

震える身体で少しでも離れようとして、膝まで中途半端におろされているズボンのせいでバランスを崩して床に倒れ込む。


「……痛、」


打ちつけた頭や尻ではなく、心が、痛い。

蒼の言葉が、胸に残って、痛くて。
目から溢れた涙が椅子に染みを作っていく。


「…まーくんなんか、大嫌い」


組み敷くような体勢で蒼が俺の首に顔を埋める。
さっき噛まれた場所を舐めるように舌がなぞる。


「…っ、…や、だ…」


してる行為は恋人のそれと何も変わりはないのに、冷たい声音で直接的に囁かれる台詞に、…初めて、蒼に言われた言葉に心が震えた。


「好きだよ」って言ってくれた優しい声と…まるで違う冷たい声。

「ごめん」って優しく撫でてくれた手と…今は手首を押さえつけているコウイの為だけの手。


「……っぅ、ぅ、…」


いやだ。いやだ。
視界が滲んで、景色さえ、もう見えない。

亀頭をなぞる手が動き、…性器を手の平で握られる。
また、まるでそういう目的のための作業みたいに扱かれて無理矢理射精させられる。


「ぅ、…ぅゔ…っ、ぁ゛ぁああ…っ、や、だ、…っ、ぐ、ンン゛ぅぅうう…っ、あゔ…――っ、」


グチャグチャグチャ…っ、

歯を食いしばっても、声を押し殺そうとしても、一瞬で股間を刺激する快感に全身の感覚をもっていかれた。

びゅく、びゅる、っと床に吐き出された欲。
二回射精したことで意識が朦朧とし、上から蒼が退いたのに体を起こすことができない。


「はぁ…っ、は…っ」


息も切れ切れに呼吸をしていると、膝下まで降ろされていたズボンと下着を、全部脱がされる。

膝裏に手をあて、左右に大きく開かされた足。
その間に膝をついた蒼が、そこを見下ろして

「…っ、ぇ…?」性器の根元の少し下あたりに手が触れる。

冷たい感触に上擦った声をもらすと、手が降りていって。
それはなぞるように後孔の割れ目に触れて、何故かいきなり何かが中にずにゅぅ…と、入ってきた。



「あ゛、ぅ、…っ、い゛…っ、」


…ゆ、び…?

ぬるりと濡れている指の感触が、閉じた肉をごりごり擦りながら押し込まれてくる。


「ん、ん゛ぅ…っ、ぃだ…っ、ぃ、…な゛、に…っ」


グチュ、グチュ、

腸内を他人の指に掻き回される感覚。
指の腹がゴリゴリ捏ねて擦ってくる。

反射的に嫌がるように腰を、縛られた手を動かす。
けど、股の間に身体をいれられてて、右足を抱きかかえるようにして持ち上げられていてはびくともしない。
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