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ちょっと緊張しながら返答を待っていると、「ううん!ぜんぜん!」とケロっとした明るい声が返ってくる。


「なんで?」

「くーくんのことがだいすきだから!」

「…っ、…ばか」


そういえばさっきもそんなこと言っていた。

本当、コイツに何を聞いてもアホみたいな答えしか返ってこない。
聞いた俺が阿保だった。もう絶対に聞かない。


昨日の今日で人が人を好きになってたまるものか。
そんな簡単に人は人を信用するようになんかできてないはずだ。

そう思うのに。


「…っ(…嗚呼もう、)」


それでもそんな純粋でまっすぐな言葉に顔が熱くなる。
それと同時に目頭も熱くなった。

嘘だってわかってるのに、コイツの言ってることなんてあてにならないってわかってるのに、そのまっすぐな言葉が何故か心に素直に響く。

…大好きだなんて言葉、今までこんな風に言われたことないから、どうしようもないほど狼狽えて、感情が揺さぶられた。

あんな惨めな生活をしてきて、そういうことを誰かから言われる日が来るとは思わなかった。

動揺しすぎておかしくなりそうだったからなんとかして会話を違うほうに持っていこうと視線を漂わせていると


不意に視界に入った光景。

無言で見つめる。


「…(…)」


真冬のパジャマが大きいせいで、こうやってやってると上から服の中が丸見えだった。
なんか上から見える白い肌とか、乳首とか、少しぷっくりした身体がどことなく厭らしい。
…エロい。


そもそもなんでこんなに服大きいんだ。


どうみても誘ってる。
…真冬は顔も結構…俺好みだし、……もし俺がショタコンだったら絶対襲ってる。

どうせ本人は何も考えてないんだろうけど。
そう思うとなんかムカつく。


「…えっち、変態」

「へ…なんでいま、って、ぁ…っ、ぎゃぁっ!」



抱き寄せついでに真冬の赤くなっている耳たぶをがぷっと嫌がらせに噛んでやる。
瞬間、ものすごい声を上げて身体が跳ねた。
面白い。

反射的に逃げようとする真冬の腕を掴んでもう一回今度は軽く舐めると、絶叫を上げて離れていく。

涙目になって真っ赤になった真冬が耳たぶを手でかばいながら息も絶え絶えで信じられないという顔でこっちを見ている。
異常な動揺の仕方だった。
目線の彷徨い方が凄い。


「…っ、な、ななな…っ、ほほほんとうに、くーくんのおんなったらし!」

「…おんなったらし?」

「そ、そうやって、そーいうこと、いろんなおんなのひとにやってるんだ!え、えっとなんだっけ…あ、えと、そうだ、…っ、やりちん!」

「…何いきなり下品なこと言ってんの…」

「だ、だって、おかあさんがおとうさんによくいってるもん…!こうやって、よくほかのおんなのひととかんだりちゅーしたりぎゅーってしたりしてるのみて”やりちん”っていってるもん…!だからくーくんはやりちん!」


多分真冬自体はその言葉の意味をよくわかってないのだろう。
顔を真っ赤にしてとりあえず何か言い返してやりたいという意思しか感じない。

子どもに何という言葉を教えてるんだ真冬の母親は。
というか、今の言葉から考えると真冬の父親は浮気してて、それを母親が見れる場所にいて、…一緒に真冬も見てる可能性が高い。


…どの家もそういうのは一緒か。


落胆に似た思いに駆られながら、ぷんすかぷんすかしつつ予想外にも下品な言葉を吐く真冬にため息を吐いた。


「…お腹空いた」

「ぁ、そうだった…!あさごはん…!」


ぐるるると鳴るお腹にそう言葉を零すと、ぱっと立ち上がった真冬が「ちょっととりにいってくるね…!」と冷蔵庫の方に走っていった。
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