13
トコトコと裸足の足が前に来るのが見える。
そしてちょこんと目の前に座った。
不安そうに眉を垂れさせて、機嫌を窺うように見上げてくる。
「…くーくん。…その…いっしょに、たべてください」
「うん」
眠すぎて反応するのを忘れていた俺の沈黙に心配になったらしく、ぺこりと頭をさげてきた。
嫌だとか言って抵抗するだけ無駄だということを学んだので、眠気をなんとかおさえつけて頑張って頭を動かして素直にこくんと頷く。
むしろこっちが家に入れさせてもらってるんだからお願いするのは俺の方だと思う。
「…っ、うん…っ!…くーくんといっしょ…!いっしょによるごはん、たべれる…!」
「……そんなに嬉しい?」
「うん!」
「……」
俺と一緒にご飯を食べる。
やっぱりそんな些細なことで真冬は今までみた誰よりも嬉しそうな顔する。
真冬は”誰かと一緒に”何かをするのが好き…というか、こうやって一緒に何かをする約束をするだけで、ぱあああと顔を輝かせてすごく嬉しそうな顔をするんだと今までの何度かのやりとりで知った。
だから、自分が適当に頷く度にこんな表情を一回一回されるとなんだかむず痒い気分になってくる。
…まぁ、でも嫌な気分じゃない。
それでもその笑顔を直視したらこっちも変な顔しそうでぷいと顔を背けた。
そのまま立ち上がって後ろを向く。
「くーくん?」
「…ちょっと借りる」
「…??くーくん?」
「後ろ向いて」
視線が合ってきょとんとする真冬の手からタオルをさっと奪う。
クエスチョンマークを頭の上に沢山乗せて顔中に「?」マークを浮かべて後ろを向いた真冬の髪をタオルで押さえつける。
「わ…っ、なに、ぎゃ…っ!」
「……」
「…っ、ぐわ…っ、ぬお…っ、…くーくん…?な、…なにしてるの?」
「髪拭いてる」
ぐしゃぐしゃとちょっと気遣いながら髪の毛に当てたタオルを動かす。
タオル越しに手に感じる髪と頭の感覚。
左手はちょっと動かせない状態だから、右手だけでするという変な拭き方になっていた。
…初めてやるから強さの程度がよくわからない。
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