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そうすれば、優しいくーくんはおれを捨て置けずに一緒にいてくれるかもしれないのに。


「っ、ぁ゛、ぅ、おれ、は、」


気づけば、涙が幾度も幾度も零れ落ちていた。
堰を切ったように溢れる涙と、堪えていた感情が全部爆発する。


「くーぐんが、他の、人をすぎになった、なんで聞ぎたくながった…っ、」


時間を戻して。
全部、なかったことにしてください。

澪とくーくんが出会う前に。
それが無理なら、くーくんと出会う前に。

くーくんを失うくらいなら今ここで死んだ方がマシだ。


「ど、ぜ、捨でる、なら、今ここで、おれを殺し゛て…っ!!!」

「…っ、何、言って、」

「そうだろ…っ!!だって、おれがいるがらぐーぐんはしあわせになれなくて、だがら、おれに他のひどと、キスざぜようと、じた…!!!」


顔を背け、絶えず畳を涙で濡らす。
床に押し倒された状態で手首を押さえられてるから、この泣きじゃくったみっともない顔も全部丸見えだ。

必死にもがいても、離してくれない。

嫌だ。いやだ。嫌だ。


「あんな゛やりがた、ざれるなら、死んだ方が良い…っ」

「ッ、」

「邪魔なら、はっきり言ってぐれればいいんだ!!おれがいらな゛ぐなったって!!嫌いにな゛っだって…っ!」


また、いつだっておれは結局誰かの幸せの障害物でしかない。
昔はお母さんとお父さんを苦しめた。

今もまだ、同じことばっかり繰り返してる。

…くーくんだけは。
くーくんだけは、違う、って。

おれがいていいって、すきで、おれと一緒にいてくれるって、

(…でも、そうじゃなかった)


「…ふ、」


背けている顔が、くしゃ、と堪えられない。
涙が途方もなく畳に落ちる。

大好きなくーくんまで、おれは、くるしめて


「もう会い゛たくないっ、顔もみた゛ぐないって思っでるぐ、せに、…っ、!!お前なんが、いらない゛っ、死ねばいいんだって、…っ、そう、言ってぐれれば、あんなごと、されなくでも、おれ゛、は…っ、。」


こんなこと言われて、きっと困らせてる。もっと嫌われることをしてる。
嫌だ。そんなの嫌だ。くーくんに嫌われたくない。迷惑かけたくない。
なのに、とまらない。とまらない。助けて、こんな自分が嫌いだ。嫌いだ嫌いだ嫌いだ。大っ嫌いだ。


「ぐーくんに捨でられるぐらいなら、殺ざれたほうがマシだ!!くーぐんならできるだろ、おれを、こ」

「殺せるわけないだろ…っ!!!」


切羽詰まった怒鳴り声に、ドクン、と胸が震えて締め付けられた。
その声はあまりに真剣で、泣きそうで、


「…俺に、まーくんを殺せるわけ、ない…」


小さい吐息とともに零された酷く震えている言葉。
首元に顔を埋められ、「…っ、」その感触に微かに身体を硬くするも、手首は強く掴まれているままでびくともしない。
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