蒼以外を見ることなんて、許されない 1


***


「…っ」


ぐちゅり。
厭な音が耳に届く。


「なぁ、まーくん。アイツ、俺のまーくんに色目遣ってたよな?」

「…そんなこっ、ぁ…っ、な…っ、」


言い終わる前に、腰を引いて打ち付けてくる。
でかい肉棒で無理矢理後孔をその形に拡げられて、ぐちゅっぬちゅっと耳を塞ぎたくなるような音を立てて抜き差しされる。
深いところをえぐられて、息が一瞬出来なくなった。


「ん…っ、は…っ」


打ち付けられるたびに感じる甘い痺れに唇をぎゅっと噛むと、唇を重ねられ、無理やり舌でこじ開けられた。
まるで恋人同士みたいな舌の絡め方にぞっとする。


「ほんと…っ、やめ…ッ」


嫌だ嫌だと必死に抵抗しても、その反応はさらに蒼の機嫌を悪くする一方で。
どうにもできない自分が悔しくて、悲しくて、涙がにじむ。


……蒼が冷たい目で向ける視線の先には、一人の男。

俺が授業中におとした消しゴムを拾ってくれた人だった。

その腕と脚はガムテープで縛られ、床に倒れた状態のまま、こっちを向かされている。

俺の消しゴムを拾った、ただそれだけで蒼は「色目を遣った」と思い込んだらしい。


…それは帰りのこと。


鞄の中に用具を入れようと、教科書をそろえていると、手の端が消しゴムに当たり床に落ちた。
それをこの男子生徒が拾って、渡してくれた。

ただ、それだけのことだった。
学校内ではよくある、なんてことない光景。


でも、それだけでもう蒼の癇に障ったらしい。

ましてや、俺が「ありがとう」と声をかけたことで彼の怒りは限界に来たらしく、後ろの席を見た時にはすでに蒼は立ち上がっていて。

その、人形のように感情のない瞳をする綺麗な顔に寒気を覚えた。

顔から血の気が引いて、「違…っ」と言いかけた瞬間腕を引っ張られて、引き寄せられた。


そして何を言ったのか、蒼が男子生徒の耳に何かを囁いて、青ざめたその人はいまこうして空き教室に連れてこられている。
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