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やだ。やだ…っ。


「やっぱり綺麗な好き通るような白い肌だあ…」

「やめ…っ、」

「あんなにきれいだと思って、ちょっと興味あって君をかげから見てただけだったのに。僕に傘を貸してくれるなんて、僕の事好きなんでしょ?そうなんだよね?」

「違う…っ、そんなこと、思ってない…っ」



もしこの人が言ってることが本当だとして、なんで傘を貸したことがきっかけでこんなことになるんだろう。
鳥肌が立って耐えられなくて、身を必死に捩って上の身体をどかそうとする。
でも、こんな体勢で乗られてたら力が入らない。


「あはあ…っ、」

「――ッ、」


何か、硬いモノがあたって、る――。
制服のズボン越しに尻の割れ目をなぞるように何度も擦りつけられて、それを感じた瞬間に全身から血の気が引く。
ゆさゆさと背後で動いているのを感じる。
布と布が擦れる音。

知らない人のソレが、割れ目を上下に往復している感触にゾワリと毛が逆立つ感覚にとらわれた。
その人だって、ズボンをはいているはずなのにこんなにくっきりと押し付けられるってことは完全に…その、勃ってるってことで。
それは、朝の道端の光景としてはあまりにも異常なものだった。

喉の奥から声にならない悲鳴が漏れた。

いやだ、いやだ、いやだ…っ。

気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い――。


「…あ゛ッ!?」


気づけば、すぐそばに転がっていた鞄を持って、無我夢中で振り上げていた。
油断していたのか擦り付ける動作で少し腰を浮かせた男に、うまく当たったらしい。
痛みの声と鞄を持つ手に鈍い何かを打ったような振動が伝わってくる。

六時間の授業分の教科書とそれに加えて読書用の本が入ってる鞄は、とても重くて多分すごく痛いだろう。
苦痛に声を上げる男に、「ご、ごめんなさい…っ」と反射的に謝ってから逃げるように走り出した。
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