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「いやー、あれ、何て名前だっけ…一之瀬?って奴は本当に察し能力が高くてね。」
「…っ、え…」
「ずっと君と一緒にいるし、他の人が気づかないような距離から見てても絶対に気づいてくるから、面倒くさくてねぇ」
「っ、」
「まぁ、でも君の学校にお金で雇った子がいるから、いつでも写真は撮り放題なんだけどねぇ?これからもっと君のコレクションが増えるんだ。嬉しいなぁ…」
…何を、言ってるんだ…この人は。
浮かれた様子でべらべらと話すその声に耳を塞ぎたくなった。
「お、俺、学校いかないといけないから…っ」
こんなの、もう聞いてられない。
異常だ。普通じゃない。
それに、前に恐怖に感じていた足音がこの人のものだったんだと気づいて、今一緒にいるんだという事実に血の気が引く。
今すぐ逃げようと、恐怖に駆られて立ち上がり身を翻して走り出そうとすれば足を掴まれたせいで、つんのめって顔から床に打ち付けてしまう。
「しばらくは、まだ朝日も昇らないからそんなに急がなくても大丈夫だよおー」
「ひ…っ、やめ…ッ、」
にたあ、と気持ちの悪い笑みを浮かべて、転んだ俺の背中の上に跨ってくる。
やばい、やばいと心臓がばくばくして、「は、離して…っ」と暴れる俺の首を後ろからぺろりと舐められて、その湿った感触と気持ち悪さに「う、うあ…」なんて泣きそうな声が漏れて吐きそうになった。
なんで、朝っぱらからこんなことになってるんだ。
後ろからワイシャツをめくられて、その下に手が滑りこんでくる。
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