18
中三の時に俺が傘を貸したって言ってたから、もしかしたらその時からずっとだったりして…。
「…っ、」
それを考えるとさあっと全身から血の気が引きそうになる。
(…もしかしたら勘違いかもしれない。考えすぎかもしれない、けど)
もし本当にそうだとしたら、蒼から自立するために一人で行こうとしたことも、全部蒼の心配を無下にする行為だったんだのかもしれない。
……でも、どっちにしろ、…これ以上迷惑をかけるわけにはいかないんだ。
「…まーくん?」
やっぱり少しぎこちなかったのかもしれない。
怪訝そうな表情が見えて、ドキリとする。
これ以上このことについて聞かれたら思わず言ってしまいそうだと焦って、「今、誰か出ていったの?親とか?」なんて話題を逸らしてみた。
「いや、…昨日知り合い、が家に来てたけど、もう帰ったよ」
知り合い。その言葉を吐くことさえ嫌そうな表情で、嫌悪するように吐き捨てた。
そして、蒼にしては珍しく歯切れの悪い口調でそう呟いて。
それを不思議に感じていると、空気を変えるように彼は優しく微笑んだ。
「…でも、まーくんから迎えに来てくれたのは凄く嬉しい」
ふわりと本当に嬉しそうに瞳を細めて微笑む蒼に、頭を撫でられてへへ、と頬を緩める。
良かった。早く来て、迷惑に思われたらどうしようかと思った。
「何もなかったなら、良かっ…」
「蒼?」
安堵したようにほっと息を吐いて、でも頭の上の手の動きがぴたりと止まる。
それを不思議に思って見上げると彼は眉を顰めて、…不意に近づけられる顔。
「え…っ、何、」と慌ててなんだなんだと驚いて思わず後退しようとすると、腕を掴まれて何故か引き寄せられた。
少しの間、そのままで「…?…?」と首を傾げていると、頭の上でぽつりと呟く声。
「何か、してきた?」
「…………なにか、って?」
思い当たることがなくて、目を瞬く。
「……匂い、が、」
「え」
その言葉に絶句する。
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