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丸い椅子に座って、髪からぽたぽたと流れる雫を他人事みたいに、…なんだかはっきりしないような、遠い意識のまま眺める。
最初に入ったお風呂の時は赤く濁ってたけど、今はちゃんとお湯の色になっていた。


「まーくん、ほんとにお人形さんみたいだな」

「……?…なぁに?」


ぎゅうっと後ろから、お腹に回った腕で抱きしめられる。
驚いて顔を上げれば、…目の前の鏡に映る光景に、…胸がきゅううってなって、逃げ場を探すように目を伏せた。

と、ぽたり、ぽたりと雫が、無防備な肌を濡らしていたお湯が、触れた場所から彼の着物を更に濃く染め上げていくのが見える。


「着物、濡れちゃうよ…?」

「うん」


耳のすぐ後ろで楽しそうに笑う気配がして、吐息が少し触れてくすぐったい。

うん、ってどういう意味だろう。
濡れちゃってもいいのかな。せっかく素敵な御洋服着てるのに。

まぁ、くーくんがいいなら、それでいいか。
ぼんやりした思考をのろのろ動かして、わいた疑問。


「…にんぎょう、…?」


ぽつりと、さっきの言葉を思い出し呟く。

重く、体重ごと預けるように抱き込まれたままその言葉の意味を反芻していれば、「そう。…可愛くて、綺麗な御人形」とやや真剣みを帯びて返された。
首筋に吐息と柔らかい唇が触れ、小さく震える。

軽く身を起こしたくーくんに、鏡を見るよう促され

…裸で、目の前に座っている自分と、目が合った。

動揺を隠せず、後ろにいるくーくんを見れば
おれを抱き締め、雫を垂らす髪に触れる彼が、陶酔するほど…優美に微笑む。


「光に透けるとキラキラしてるように見える触り心地の良い髪とか、」

「……っ、」


数本指先に絡め、大事そうに口づけられる。


「俯きがちな…水晶みたいに透き通った瞳とか、」


「透明感があって、触れた時に吸い付くような肌とか、」歌うように続けられていく言葉通りに、指先が身体のラインに沿ってその箇所に触れていく。胸の尖りを掠めて、滑らかに撫でられる度に熱を孕み、眉を顰め て


「俺にこうされても、されるままになってるところとか…」

「…っ゛ん、」


…ふ、と熱い吐息が、触れた。
首筋に顔を埋めたくーくんに、吸われる。
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