20
鮮明に、想像させられる。
勝手に脳が、考えてしまう。
その情景を、その光景を、
…また、あの部屋で、
澪と抱き合い、
薄い着物を脱がしながら肌に吸い付き、
掌に収まらないほど大きな柔らかい胸を揉みしだい て、
それ、から
「……っ、何度も、もとめ、られ、…」
目の前が真っ暗になる。
声が、掠れる。
身を引き裂かれた思いがする。
頭をよぎる、前に澪から渡された…コンドームにたっぷりと入った精液。
「…澪、もうやめろ」
「きゃっ、」と小さく上がる声とともに目の前にいた姿が不意に遠ざかり、視界が開けた。
…ふら、と意識もままならない気持ちで顔を上げる。
「……っ、」
と、
澪の腕を掴んで引き寄せたらしいくーくんは、おれと目が合うと気まずげに視線を逸らした。
そうされたことに今度こそ耐えられずに、狂ったように泣きわめきそうになる。
(……痛い、)
ぎゅーーーって今までよりもっと、もっと心臓から下腹部全部が締め付けられて、声さえ出せない。
それでも
微かな救いを求めて、いつもみたいにぎゅって手を繋いでほしくて、震えてどうしようもないこの身体を抱き締めてほしくて
…だらんと下げている指先を、持ち上げようと して
「もう、素直じゃないんだから。さっき、ここに来るまでだってずっと手をつないでくれてたでしょ?」
「……ぁ、…」
呆けたような、絶望に満ちた声が零れる。
その彼の手を、両手でぎゅって包むようにする澪は、楽しそうに笑っていた。
…この世界には二人きりしかいない、そんな笑顔で。
おれが欲しいものをすべて手に入れて
とても満ち足りているように、慎ましく可憐に、あこがれるほど清楚な所作で
「……は…は、」
渇いた笑いが唇をおして出た。
邪魔をしてはいけない。
…そうだ。
くーくんは澪が好きなんだから。
…澪を、…『愛してる』んだから
別にこれはおかしいことじゃない。
ずっと、わかっていたのに、それでも醜くわめいて、縋りついていたのは自分のほうだ。
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