25

………

…………………


瞼を、持ち上げる。

まるで永い眠りから覚めた後のように、思考は霧がかかっていて覚醒しきっていない。

見慣れた天井と、寝かされ、身体にかけられている布団。
手を上に伸ばしてみれば、消毒液の匂いと、目に染みるほど白く真新しい包帯が巻かれている。

大人の男に近い、手の形にも違和感はなかった。
……考えを、整理するほどのことでもない。

布擦れとともに静かに上半身を起こし、…ゆっくりと、唇を動かす。




「………あ、お、…い…」



呟いた名前は、舌に馴染んでいるように自然と零れた。


「は、は…っ、」


溢れ出る想いに堪え切れず、嗚咽する。
顔を両手で覆い、声を出さずに肩を細かく震わせて笑いながら、静かに涙を流した。


――――――――――――――――――――


(せめて、)

(もう少しだけ、幸せな夢を見ていられたら良かったのに)
prev next


[back][TOP]栞を挟む