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呼吸もできないほど口内を翻弄された。
キスで感じるのかと思うほど、絡め合わせていると段々下腹部がぎゅう、と反応し、腰をジンジンと甘く疼き始めてしまう。
(…なんで、こんなに気持ち良いんだろう)
唇や舌の裏、歯茎など口の中を丁寧に舐められ、粘膜を混ぜ合わせるような蕩ける口づけになんだか身体が熱とは違う感じに熱くなる。
慣れたようなやり方で深いキスをされていると、舌が、頭が快感に痺れて、ぼーっとしてくる。
唾液が口の端から零れ、頬に伝って布団に落ちていく。
さすがに何をされているかなんて熱を出していてもわかる。
この状況はおかしいと、今のちゃんとしない頭でも分かる。
「…っ、な、んで、…?」
床に放り捨てていたネクタイで両手首をまとめて縛られたことに気づいて、青ざめた。
ぞわりと寒気が走る。
血の気が引く。
嫌だ。嫌だ。
「あおい…っ、ひぁ…っ」
首筋に這うぬるりとした感触に、身体が震えた。
その舌が段々と降りてきて、それが胸元に辿りついた途端にびくりと身体が震える。
「そ、こ、や…っ、や゛、め…っ、」
必死にネクタイを解こうとして、それに気をとられているとチロチロと胸の尖った先端を円を描くように周囲を舐められる。
時折押しつぶすように舌先で触れられ、舐めまわされた乳首を軽く歯でひっかけられて「ん、ん゛、ふ…っ」と上擦った声が口から漏れる。
(…こ、こんなことされたら余計勃つ、んだけど…)
下半身に嫌でも熱が集まっていく。
やばい。本当にやばいって。
……というか、なんで蒼とまたこんなことになってるんだ。
自分の家で友達に襲われるなんて、冗談じゃない。
見慣れた部屋なのに、されている行為が異常だ。
…なのに 頭が、うまく働かない。
「大丈夫。怖くないよ。ちゃんと気持ち良くしてあげるから」
「ちょ…っ、」
今度は顎を掴まれて唇を押しつけられ、啄むようなキスをされる。
おれと蒼は友達なのに、こんなことをされて、自分は感じていて。
無理矢理与えられる快感に、おれを見るその欲情した瞳に、恐怖が心を占める。
「んっんぅ…っふ…ぅっ」
その薄く整った唇を重ねられ、舌を絡めるたびに声が漏れて、目の前の顔がそれに対して機嫌良さそうに微笑む。
何故か心底嬉しそうな表情に抵抗の声を上げようとした途端、顎を掴まれてまた口を塞がれた。
「舌、熱くて溶けそう」
「…ふぁ…っ、…んっ、や…っ、ぁ…っ」
飲みこみ切れない唾液が口端から溢れて、それが頬を伝っていって気持ち悪い。
やだって言ってるのに。
必死で抵抗してるのに。
それさえも蒼にとっては性欲を掻き立てるものでしかないようで、おれが抵抗するのを見るたびに嬉しそうにするから、どうしようどうしようと焦る。
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