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僕もこれほどの美女を妻にするとなれば、浮気されないか心配でいてもたってもいられないから、そうする気持ちもわからないでもない。

……だとしても、ここまで露骨にするのは相当な束縛心だ。
その数からも彼女の言うように、行為の頻度が多いことは見て取れる。

毎日?昼夜を問わず?

耳を疑う言葉に、絶句する。

なんということか、予想より遥かに僕らの雇い主は精力絶倫でもあるらしい。
たとえどれほど相手を愛していたとしても、毎日かつ1日に何度もするなんて、普通の男では不可能だ。

しかもこの雰囲気を見るに、度重なる猛烈たる性交を澪様は非常に悦んでいる。
まんざらでもない、否それ以上の好感な態度からすると、かなり満足する体験をしていそうだ。

精力の強さやら持久力やら女性を悦ばせる技術やらその他含め、これら諸々を一人の男が持ち得るのか。
もしかして蒼様は女性経験が豊富なのだろうかと、色々な意味で驚かざるをえない。


……確かに、婚約者とはいえども今の時代結婚まで待つ奴はいない。
キスマークもあったし、澪様の発言からもすでにヤッていることは間違いない。


とすると、夜の営み時には今目の前にあるこの視界に入れるのも罪に思える……ふくよかなおっぱいを拝めて直接揉めているのだと思うと、婚前にヤリたくなるのも無理はないし、僕自身良からぬ妄想をしてしまうのは男の性分として致しかなかった。

同じ男として、素直にこの女性と結婚できるのがうらやましい。
僕には不可能だとわかっていても考えてしまうのが浅はかな人間の思考だ。

お嬢様で性格もいい美人とか、夢のまた夢であり、遥か遠い手の届かない存在でしかない。

あーマジですか、そうですか、前世でどんだけ良いことしたんだよとまだ会ってもいない『蒼様』の男としてのそっち方面の違いまで知ってしまったこととか、勝手な劣等感と屈辱と羨望と不満とで、身勝手な考えを抱く自分に反吐が出そうになった。


(……雇用されただけでも充分すぎるぐらいなのはわかっているが、)


こんな別嬪と生涯を供に過ごすことになる男の幸せそうな、ほくほくな満悦顔をこれから拝まないといけないのかと、ここに来るまで雇い主の苦労を慮っていた同情心とは間反対な面持ちで歩く。

一通り屋敷を見回り、案内を終えた後。


「お互いの自己紹介も兼ねてお茶にしましょう」


鶴の一声な澪様の提案で、とある和室の一室で机を囲むこととなった。
よくある平凡な家庭の和室とは格が違う。
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