3
「おい…、この輝かんばかりの美形を無視するとはどういうことだ……」
自分で言うか。自分で。
確かに小鳥遊さんは並大抵のモデルより綺麗な顔してるけど、自分で言ったら台無しだと思う。
…とは言わずに、耳にイヤホンを付けて音楽に集中した。
「見ざる聞かざる話さざる」
「聞けええええ…!!」
「…(うわ…)」
足を掴んで、ゾンビの様な顔で這い上ってこようとする小鳥遊さんにドン引きした。
全身全霊で俺の歩みを止めようとしている。
最早イケメンのすることじゃない。
(ちょっと怖い…)
「っ、と」
あまりの力に身体のバランスが崩れそうになって踏みとどまる。
倒れたら、危険だ。危険すぎる。
襲われても困るし。
変質者に会っておびえる女子の気持ちが分かったような気がする。
しかし俺は女子じゃないので、やはりここは冷静にしかるべきところに小鳥遊さんを追放すべきだろう。
「えーっと、警察は、1…」
「ちょ、…っ」
焦ったような顔をする小鳥遊さんを無視して、もう一度プッシュする。
「1…」
「今度食事奢るから…!!」
その言葉にぴくりと眉を寄せて、携帯をポケットにしまった。
いまだに地面を這いつくばって、先程一瞬切羽詰まった表情をしていた小鳥遊さんを真剣な顔で見おろす。
「本当に奢ってくれますか」
「…奢る。わかった。わかったから」
橘くんがモノにつられやすいタイプで助かったとか、聞き捨てならないことを呟く小鳥遊さんにムッとする。
……こうやってご飯を出せば俺が弱いということも知ったらしい小鳥遊さんは悉くご飯で釣ろうとしてくる。
餌付けされている猫のような扱いに、一瞬だけ…その顔を蹴り飛ばしたくなった。
別に俺がつられやすいとかじゃなくて
こんなところにずっといられたら、隣の部屋の俺にも迷惑がかかるかもしれないから。
仕方なく。
”仕方なく”、ご飯でつられてやったんだからな。
「…あー、もう」
ふ、とため息をついて、しゃがみこんだ。
(…ま、話くらいなら聞いてあげてもいいか)
残念イケメンな小鳥遊さんと視線を合わせる。
[
back]
栞を挟む