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そんなおかしなことを言ってる暇があるなら、
…ていうか、モてる自覚があるのなら早く誰でもいいから恋人を作ってほしい。
そしてアパートの廊下で倒れるという非常識なことをしないようにその人に見張っててもらいたい。
(……あ、でもあのキスしてた人が恋人なのか)
だったら今すぐに来て、この変質者を連れ帰ってくれ。
「…次ふざけたら、本気で蹴り飛ばしますよ」
ぼそりと呟けば、むっと拗ねたような顔をされる。俺は別に悪くない。
「今日の夜飯、何?」
「…は?」
徐々に顔を近づけてくる小鳥遊さんの唐突な問いに、呆気に取られて素っ頓狂な声が口からもれる。
つーか、近い近い…!!
邪魔離れろばか変態…!!
その予想外の接近に加え、頭のネジがぶっとんでいそうな質問のせいで、言葉を理解するのに時間がかかった。
(夜ご飯…?)
「何?」
再度問うように顔の傍で囁くように聞かれ(顔の横の壁に手を付きながらどんどん距離を縮めてくる)、若干避けながら冷蔵庫の中を思い出す。
確か二日前に買った野菜があったはず。
「えっと…多分、おでんですけど」
寒いし、この時期には最適だろう。
ほかほかの大根が食べたい。
白っぽくて透明でやわらかくてふわふわな大根。
ちくわとか卵とかはんぺんとか…うう、お腹空いてきた。
想像しただけで美味しそうな絵面だ。
「おでん…」
ぽつりと呟く小鳥遊さんを唐突に殴りつけたい衝動に駆られる。
俺がその言動行動に振り回されまくってるのに、
本人はそんなこと考えてすらいないような……すっごく呑気そうな顔に異常にムカついてきた。
殴ってもいいかな。
変態だからこれぐらいしても許される気がする。
「それより離れてくれませんか。鬱陶しいんですけど」
軽い殺気を込め、威圧する。
普段よりも低めの声。
自分的にはドスを含んだ不良的なイメージで、充分に牽制したつもりだった。
けど、
「激辛キムチらーめんがいい」
「……はぁ?」
ぽんと投げられた言葉に、耳を疑った。
キツい目つきをしていたことすら忘れてぱちくりと目を瞬く。
「えーっと、今なんて言いました…?」
自分の耳がおかしくなったのか?と困惑しながら聞き返した俺に対し、
「あっつあつの激辛キムチラーメンが食べたい」
小鳥遊さんはどやぁ…と効果音がつきそうな、そんな雰囲気を醸し出しながら二度目の個人的な欲求を口にする。
その唇が楽しそうにうっすらと笑みを浮かべていた。
「……あの、」
呆気にとられるとはこのことだ。
…――何故か小鳥遊さんがいきなり食の要望を何度も言い始めた。
俺に言ってもどうしようもないのに。食べたいなら自分でコンビニとかスーパーに買いにいけばいい。
戸惑いつつ視線を送ると、にや、と得意げに微笑む顔。
「な、橘クンに頼みがあるんだけど」
「……聞こえません。聞いてませんよ。今耳にイヤホンつけてるんで聞こえませんからね」
実はイヤホンなんかない。
だから裸の両耳にバッと手を当てる。
ぶるぶると首を横に振った。
(…まさか俺に作れって言う気か)
ないだろうな。うん。そんなはずない。だって俺ただの高校生だもん。と相手が確実に社会人であることを前提にひとりでに頷く
次の瞬間、
「っ、」
耳に当てた手を掴まれ、丁寧に引き剥がされた。
手首に触れる手の感触に、「ちょっと、手…っ、」と焦って声を上げる。
離せ、と睨み付けるようにして見上げても、何の効果もなかった。
相変わらず距離は異常なほどに近いまま
「夜飯、激辛キムチラーメンにしろよ」
真剣な顔で、己の欲求を突き通してきた。
(…幻聴か…?)
目が飛び出るかと思った。
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