8

今、
唇を塞がれているのは紛れもなく自分のはずなのに、


「――――っ?」


目の前で瞳を軽く伏せている顔に、触れている唇の感触に、頭がうまく回らない。


「……っ、?!、ひ、」


ぺろ、と味わうように唇を舌でなぞられ、間近で怪しく光る瞳を見て、本能的に背筋に寒気が走った。

…つーか、なんだよこれ。
なんだよこの状況!!


「…っ゛、」


ガリッ。
ぐにっとした弾力のあるものが歯に当たる。


「い…っ!!」


痛みに上がる声。
音を立てて思い切り舌を噛んでやった。


「ふっ、ざけんな!この変態…!!」


ごしごしと唇を袖でぬぐい、心底混み上がる苛立ちと吐き気に睨み付ける。

(ああ、もう、やっぱり小鳥遊さんは小鳥遊さんだった…)

俺はホモじゃない。
それに、今現在女子に興味がないからといって、だから別に男でもいいとかそういう気は更々ない。

しかし、この人相手に油断していた自分が一番悪い。


「餓死して虫の餌になりながら勝手にくたばれ」


痛みに口をおさえる小鳥遊さんに捨て台詞を吐きつつ、急いで鍵を開けて自分の部屋に入った。
prev next


[back]栞を挟む