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今、
唇を塞がれているのは紛れもなく自分のはずなのに、
「――――っ?」
目の前で瞳を軽く伏せている顔に、触れている唇の感触に、頭がうまく回らない。
「……っ、?!、ひ、」
ぺろ、と味わうように唇を舌でなぞられ、間近で怪しく光る瞳を見て、本能的に背筋に寒気が走った。
…つーか、なんだよこれ。
なんだよこの状況!!
「…っ゛、」
ガリッ。
ぐにっとした弾力のあるものが歯に当たる。
「い…っ!!」
痛みに上がる声。
音を立てて思い切り舌を噛んでやった。
「ふっ、ざけんな!この変態…!!」
ごしごしと唇を袖でぬぐい、心底混み上がる苛立ちと吐き気に睨み付ける。
(ああ、もう、やっぱり小鳥遊さんは小鳥遊さんだった…)
俺はホモじゃない。
それに、今現在女子に興味がないからといって、だから別に男でもいいとかそういう気は更々ない。
しかし、この人相手に油断していた自分が一番悪い。
「餓死して虫の餌になりながら勝手にくたばれ」
痛みに口をおさえる小鳥遊さんに捨て台詞を吐きつつ、急いで鍵を開けて自分の部屋に入った。
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