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まさか、こんな場面に出くわすとは。
呆気にとられる。
隣の小鳥遊さんは、モデルよりも綺麗で格好いい人で。
よく部屋から喘ぎ声とか聞こえてくるし、「きっと彼女さんがいるんだろうな」なんて前に考えたことはあった。
しかし、これは予想できるはずもない。
(彼女って、)
(……男、だったのか)
目の前で官能的に繰り広げられる光景に、思わず目を疑った。
(…別に男同士だから変だとか、偏見は持ってないん…だけど、)
自分に関係ないことならどうでもいい。
小鳥遊さんが俺の関係ないところで誰かにセクハラしようが、裸でランニングしてようが構わない。
全然オッケーだと思う。
しかし、と悩んでむぅと首を捻った。
「…。男どうし…」
もう一度その意味を理解しようと小さく呟いてみた。
…オトコ。生物学的にいうなら、オス。
でも、おかしくはないのかも…しれないと一瞬考えてしまった。
友達も、そういうことノリでしてくる奴いるし。
こんなガチじゃないけど。
でも。
「…(なんで、丁度俺が帰ってきた時に限って…)」
はぁとため息をつく。
ひゅううと吹く冷たい風に身体が震えた。
反射的に目をぎゅっと一瞬閉じる。
寒い。本当に寒いのやだ。
そんなことを考えながら、目の前の光景に思考を戻す。
「……」
午後10時過ぎ、自分の部屋の隣の201号室の前。
部屋の前の蛍光灯の光に照らされる二人。
まるで漫画みたいに、相手の人を壁に押し付けて唇をふさぐ小鳥遊さん。
目を閉じて息をする暇もなさそうなくらい、荒々しく口づけている。
「ぁ…っ、はる…っ」
時々見える舌に、口の端から零れる唾液がとてつもなくエロくて。
そんな光景にすこしばかり興味をそそられて、ごくりと唾を飲み込んだ。
「…(……うわ、)」
人生初、男同士のキス。
漫画やアニメならまだしも、まさか現実でこんな光景を見ることになるとは思わず、ちょっと観察してしまった。
呼吸をしようと唇を離すたびに潤んだ瞳で小鳥遊さんを見つめる男の人。
(なんか、…えろ)
少しの間思考を停止したままぼーと眺めていて、指にかかる袋の重さにはっと我に返る。
つーか、こんなところでイイ雰囲気にならないでもらえませんかと言いたい。
こんなものを見てる場合じゃない。
こんなものとかいうと失礼かもしれないけど、明日の朝ごはん早く作って勉強しないと。
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