『こうして黒猫クンと変人さんは。』1
◇◇
隣の部屋の小鳥遊さんはやっぱり変人で変態だ。
「……」
「…ぐー…」
「…何やってるんですか。マジで」
三日間俺が修学旅行で不在中に、物や紙束等に埋もれていた家主。
…何故こうなった。
ぐったり床に倒れているその人間は俺を瞳に映して生気のない表情でふ、と微笑んだ。
「黒猫クンがいなくて激ヤセした。マイハニー…ごほっ」
「ふざけてる場合ですか。さっさとお風呂入って下さい」
「一緒に入」
「入りません」
…数分後。
シャワーを浴び終えた後、タオル片手に何故か上半身裸で出てきた小鳥遊さんを軽く睨む。
…小鳥遊さんはこんなんでも色々整ってるから、女子だったら泣いて喜んだだろう。
濡れた髪とほどよく鍛えられた身体がなんか…エロい。
「…なんで裸なんですか」
「ドキドキする?」
「しません」
掃除の最中に障害物になっている物体を邪魔でむぎゅっと掴んで無造作に投げると、うおおおと怖い勢いで小鳥遊さんが血眼になって追いかけていった。
「エリザベス…っ、」
「…それ、まさかこのぶさ猫の名前ですか」
ぶにゅっと変な顔の等身大ぬいぐるみ。
わざとらしく泣いている様な声を出してそれを抱き潰す小鳥遊さんに可哀想な人を見る様な視線を送ると、ムッとその整った眉が寄る。
ぷいと少し恥ずかしそうに逸らされる視線。
「…悪いか」
「…別に、悪くはないですけど」
「ふふん。わかったなら良し」
可愛いものが大好きらしい小鳥遊さんは巨大猫を抱きしめたまま俺が家事をこなしていくのをへへと普段以上に頬を緩ませて観察してくる。
…やり辛い。
「見ないでほしいんですけど」
「怒ってる顔も可愛いな」
「ふざけるなら窓から放りだしますよ」
「…本気なのに」
むっすーとむくれる姿に呆れて物も言えない。
でも、
(…本当、よく一緒にいるようになった)
小鳥遊さんの代わりに家事をこなすというバイトを初めて半年。
何度も何度もアパートの扉の前で行き倒れ、挙句の果てには真夜中に俺の部屋をノックしてきたりして、何度かご飯を作ってあげたら、「バイトしない?」と持ち掛けられた。
前から参考書と引き換えに作ってあげたりしてたけど、その時をきっかけに小鳥遊さんの雇われバイトになったのである。
こうして考えると、もう半年以上も一緒にいるんだと思うとなんだか複雑な気分になった。
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