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いやいやこのくらい嫌がるの、当たり前だからな。
「麗央だって後悔するって、な?」
そもそも、俺相手に勃つわけないんだし。
だからやめとこう、と俺のできる限りの優しげな笑顔で訴える。
すると、ギラリと眼光を光らせた麗央がこっちを睨み付けた。
「あ゛?」
「ひいっ」
その殺意を孕んだような鋭い眼光に、驚いて肩が跳ね上がる。
あ、いや、別にビビってない。誰もビビッてなんかないんだからな…!!
誰に言い訳しているのか、自分でももう訳が分からない。
とりあえず、逃げだしたいことだけはわかる。
「誰のせいで、女とヤれなかったと思ってんだ?んー、言ってみ、下僕クン」
「え゛、いや、それは、」
そもそも、麗央の彼女が色々と軽すぎるのがいけないと思うんですけど…。
なんていうわけにもいかず、口ごもる。
「ていうか、下僕に拒否権なんかないし」
そんなことを言いながら、スカートをめくろうとする麗央に青ざめる。
こ、ここまで来たら最終手段だ。
顔を背けて、恥ずかしげに視線を横にずらした。
可愛らしく、ぶりっこしてみる。
くらえ!!!俺の必殺技!!”私、女の子なんだからね作戦”!!
「あ、あのな…れお…」
「んー?」
「……わ、ワタシ、今日女の子の日で、ちょっと…」
駄目なの…と、呟きながら麗央を上目遣いで見上げる。
流石に生理中の女子(?)と合体なんてできないもんな!いくら麗央様だって嫌だもんな!
なんて思いで潤いを帯びたキラキラした目を向けると。
「………」
何、馬鹿?馬鹿なのこいつ。みたいな目で見られた。ショック。
はいいいぃ、バカです!!ごめんなさい嘘つきました!!
だからそんな目を向けないでください!!
穴があったら入りたい…。
羞恥心やら情けないやらで顔を覆っておよおよ泣いていると。
上に覆いかぶさっている麗央が小首を傾げた。
「…下僕は俺とヤるの、嫌?」
「う゛っ」
く、くそう。すがるような目を向けるのはやめろ…!!
昔から、俺はとことん麗央のお願いに弱い。
本当に、自分でもなんでこんなに麗央に甘いんだろうと思うくらいだ。
他の誰かが言っても絶対に拒否することを、麗央の言うことなら引き受けたりもしていた。
「…襟夜、ダメ?」
「う゛ぅ」
普段は「下僕」だの「アホ」だの呼んでるくせに。
こういうときだけ、名前で呼ぶのはずるい。
「そっか。やっぱり、ダメだよな…」
そう言って、まるで捨てられた子犬のような雰囲気を纏い、悲しそうに顔に影を落として、立ち去ろうとする麗央の腕を反射的につかむ。
「……、だめじゃ、ない」
ぽつりと、絞り出すように零れた台詞。
「………」
「だ、だめじゃ、ない、けど、」
口ごもる。
”けど”ってなんだ。
いや、駄目だ!!ダメだろ俺!!
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