7

普段よりまだ幼さを残しながらも少し意地悪な表情をする彼は、クスクスと笑みを零す。


「…っはに…はにふるんら…っ」

「ほんと、かわいいな。どうしても連れて帰りたいんだけど……お持ち帰りしちゃだめ?」

「…なんどもいってるけど、だめ、です」

「……」


「………そんなかおしたって、おれはうなずいたりしないからな」


一瞬怯んだ気持ちをぷいっと顔を背けることで引き締める。

…というか、俺なんかを持って帰ってもいいことなんか何もないのに。
なんでそんなこというんだろう。

そんなこんなしていると、携帯電話からコール音が鳴った。
音を発しているのは俺のじゃなくて、蒼の携帯電話からだった。

電話に出て少し会話をした彼は、「洋服が届いたよ」と俺に笑って、それを外に取りに行ってくれた。


(…ど、どんな服だろう…)


ちょっとだけドキドキしながら、玄関先までトタトタと小走りで蒼を迎えに行く。
壁に手をついて胸を期待で膨らませながら外の様子を覗き込んだ。
洋服のマークが描かれたトラックの配達業者の人から紙袋を受け取り、こっちにやってくる。

まさか買ってくれたのかと驚いて目を見開く俺に、彼は「いつも昼ご飯わけてくれるから、そのお礼として貰って」と微笑んだ。


「でも、」自分のあげてるものなんか大したものじゃないし服のほうが合計でかかる値段が多そうで、なんとなく気が引けて受け取るのを躊躇う。


(…いや、絶対に服の方が高いだろう…)


すると「貰ってくれないなら捨てるしかないな」と表情を曇らせて本気でゴミ箱に捨てようとする蒼に、あわあわと焦てて「うけとる…!!ほしいです…!!」と言えばにっこりと微笑んだ彼はそれを俺に差し出す。


「…ありがとう」とプレゼントをもらうこと自体が少し照れくさくてお礼を言って、その包みを受け取ろうとすると。


…何故か、蒼にひょいとそれを高いところまで持ち上げられて遠ざけられた。






「ぁ…」

「頑張って俺から取ってみて」




(…ひ、酷い…)


これだけ背丈の差があってどう頑張ってそれを奪えばいいのか。


ぴょんぴょんとジャンプしても、必死に腕を伸ばしても、蒼が手で持ちあげている以上届くはずなんかない。


しばらく格闘して、結局俺の呼吸が無駄に乱れただけだった。
蒼は表情どころか息1つ乱れてない。
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