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こんな状態の彼女に、今から更に追い打ちをかけるようなことをするのだと自覚して胸が痛む。
オレの表情に何かを悟ったのか、恐怖に濡れた表情で首を横に振った。


「やだ、やだ、私、別れたくない…っ、別れたく、ない…っ、謝るから、何でもするから、別れるなんて言わないで…っ」


胴に腕を回して、嫌だと彼女が叫ぶ。
…その姿に、…言おうとした言葉が、喉に詰まる。


「真白」

「……うん」


静かに、促すような彼の声に、…頷く。
一瞬、躊躇して、


「これ、返すよ」

「…っ、」


手に握っていたそれを、彼女の前に差し出した。


「もう、使わないと思うから」


罪悪感と申し訳なさで、多分中途半端な表情を浮かべつつ、彼女の手のひらに乗せた、銀色の合鍵。

…こうなる前に、お互いに渡しあっていたらしいもの。

それを見た彼女が泣き崩れるまで、きっと一秒もかからなかった。

――――――

ごめんなさい、真白くん、ごめんなさい、って聞き取れるだけでもいっぱい謝り続けて、自分を言葉で傷つけながらあまりにも泣いている姿を見てられなくて、

「――…」

頭を撫でながらかけた言葉に、彼女が驚いたような顔をする。
そして、もっともっとたくさんの涙を零したのだった。
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