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…その、どうしてか嬉しそうにも見える表情に、けど青ざめてもいく変化に…ああ、やっぱりそうなのか、と落胆した。
「俺に抱き着いて"キスして"ってせがんできたこと、もう忘れた?」
「…っ、」
「彼氏がいるのに他の男を淫らな行為に誘いましたって、真白にも言ってや」「やめてよ!!」
声を遮るようにして悲鳴に似た叫びが上がる。
泣きそうな彼女に、納得した。
ほとんど記憶を思い出していないオレでもわかる。
……それは、恋をしている女の人の顔だった。
「…そっか」
思い出してなんかないはずなのに、凄く悲しいような、ショックを受けたような気分に苛まれた。
「…オレに会いに来てくれたんじゃないんだ」
「っ、違う、違うの、ねぇ、私は本当に真白くんが好き、好き、だから、信じて…」
何を言われても言い訳にしか聞こえない。
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