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その相手が、ここにいないかもしれないのに。
(…こんなことをしてくる僕に助けを求めるなんて、佐藤は馬鹿だな)
冷めきっていた瞳に、身体に、温度が戻る。
冷静になっていく思考に…一度、深く息を吸った。
「…っ、ひ、ぅ゛……っぅ、」
「………」
ディルドをゆっくりと孔から抜き、手袋を外した。
血の気の引いたその頬に優しく撫でるように触れる。
汗とか涙とか鼻水でぐちゃぐちゃだった。
「佐藤」
「…ッ、」
静かに声をかけると肩を震わせて反応する。
大きく身体が跳ねて、硬直したように動きが止まった。
「……っ、ぇ……の、ら……?」
「うん」
恐る恐る確かめるように名前を呟く声に、頷く。
「……ほん、とに…っ?…のら……?」
「……うん」
優しく頬に触れながらもう一度返事をすれば、泣きじゃくっていた音は小さく堪えるようなものになる。
汗と涙でべたべたな顔が驚いているような表情のまま、ゆっくりとこっちを向いた。
「僕だよ。怖がらせてごめんね」
「っ、う、ぇ…っ、ぇ…っ、」
できるだけ優しい声音で謝ると、すぐにふるふると首を横に振る。
髪を撫でると震えが段々収まって、その唇に笑みさえ浮かんでいた。
”…好き、だ”
頬を赤くして、緊張に唇を震わせて
そう伝えてきた佐藤を思い出す。
…今どんな顔をしてるんだろう。
なんだか無性に気になった。
「っ、」
シュルリと布を外すと、その濡れた瞳に自分の姿が映ったのが見える。
目から新しく滲んだ涙が肌を伝ってタイルに零れ落ちた。
佐藤は安堵したように頬を緩め、強張った身体から力を抜く。
「知らない人じゃなくて、安心した?」
「ん、ん…っ、」
「そっか」
何度も何度もコクコクと頷く。
昔飼ってた犬みたいでそこそこ可愛い。
よしよしと撫でる。
「本当にレイプされるかと思った?」
「おも、った…っ、」
萎えているペニス。
蒼白になって、ガクガクと恐怖に震えているからだ。
「でも、佐藤はこれぐらい簡単にレイプされやすいってこと、ちゃんとわかってた方が良いと思うよ」
「…っ、う、ぐ…っ、」
お互いに、そういう対象になった過去があるわけだし。
思い出したのか、ぽろぽろと大粒の涙を流す佐藤が傷ついたような顔をする。
(…佐藤は、どこまですれば僕を好きじゃなくなるんだろう)
濡れた孔から指を引き抜く。
それでもびくん、と腰を震えさせていた。
瞼を軽く伏せ、ふ、と息を吐く。
「僕のこと、嫌いになった?」
「…っ、ん゛ん゛…っ、」
そう問えば、泣きながら濁音を漏らして横に首を振った。
…ここまでされても変わらないらしい。
「…よくそこまで僕なんかを好きになれるね」
凄いな、と褒めたはずの言葉がどこか嘘くさく感じるのは気のせいであってほしい。
結構酷いことをしているつもりだけど、離れていく素振りがまるでないのが不思議で堪らなかった。
「ひ…っ、はな…っ、はなし…っ、て…っ、」
「佐藤は誤解してるみたいだけど。…僕も、あいつらと大して人間性に違いはないんだよ」
性器に触れている指が動くと同時に怯えるように肩を大きく跳ねさせ、顔から血の気が引く。
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